母親の料理でまず思い出すのは、私の小学校1年の誕生日パーティーで、オムライスを作ってくれたこと。10人くらい友だちを呼んだんですよ。それだけの人数だから、普通なら唐揚げとかをドーンと大皿に載せて出したりすると思うけど、オムライスを1人1個ずつ丁寧に作ってくれたんです。手際がいいんですね。オムライスの上に「きいちおたんじょうびおめでとう」みたいな言葉をケチャップで書いてくれた。よく覚えています。おかげでオムライスは今でも好きですよ。

母親の料理で私が一番喜んで食べたのは、けんちん汁。しょうゆベースで、粉末のかつおぶしに、鶏肉とシイタケのだしが出ている。ニンジンやゴボウなどの根菜が入りミツバを散らしたもので、そんな凝った料理ではありません。でもおいしくてね。ご飯とけんちん汁があれば、それで十分でした。
母親が亡くなってからあの味を再現したいと作ってみたけど、全然できないんです。妹に相談して作っても、どうもうまくいかない。何か手だてはないかなと思って、母親のすぐ下の妹、私にとっては叔母に、けんちん汁を作ってもらえないかと頼んだんです。叔母は喜んで作ってくれて「この味でしょ」と言うんですが、これも全然違うんです。なんとか再現して食べたいですね。
母親のカレーも忘れられません。最初の頃は普通のカレールーだったんです。でも私が高校に入ったくらいから、変わったんですよ。牛肉とタマネギしか入らない、サラッとした感じのルーになったんです。それがまた、私は好きだったんです。

けんちん汁とカレーは友だちにも評判でね。今でも「直江の家に行くと、おばさんの作る料理がおいしかったなあ」と言われるんです。これはうれしい話ですよね。

母親の影響か、私も料理が好きな上、ちょっとした工夫を加えるというか、こだわって作っているんです。少し変えるだけで味が全然違う。料理は奥が深いと思います。
カレーは、ルーと野菜を別々に出すんです。タマネギやジャガイモを蒸して、ルーと別皿で出す。食べる時に野菜にルーをかけるんですが、これだとルーが染みていないので野菜にシャキシャキ感がある。この食べ方が気に入っています。
最近凝っているのは、ゆで卵。ゆで時間について15秒刻みで試してみて、理想の時間を見つけました。卵を熱湯に入れて7分たったら取り出す。水で締めずそのまま放置して、余熱でゆっくり固まらせていくんです。毎晩寝る前にゆでて、朝に食べる。これが習慣になっています。

ご飯にもこだわっています。私は建設会社で社員として働いてもいます。以前、北陸支店で働いた時に地元テレビの仕事もしていたんです。それで輪島の千枚田とご縁ができました。年会費を払えば千枚田での稲作体験ができる上、収穫した米を頂けるんですよ。その米がおいしいので、東京に帰ってからも会員を続けています。
健康にいいというので、白米と玄米ともち麦を1合ずつ計3合炊いて食べています。せっかくの千枚田のおいしい米を混ぜるのはもったいないと思いますよ。でも玄米ともち麦を混ぜると、それだけで結構な栄養が取れるので、おかずは粗食でいい。これはお勧めの食べ方です。
(聞き手・菊地武顕)