きりたんぽはご飯をつぶして筒状にします。だまこ餅もご飯をつぶすんですけど、筒状ではなくただ丸くした感じ。餅といっても、もち米が入っているわけではなくて、普通のお米だけです。形はきりたんぽと違いますが、中身は同じ。鍋のスープもきりたんぽと同じ鶏ガラのしょうゆ味ですし、セリなど一緒に入れて食べる具も同じです。
家でもよく食べていました。でもより強く印象に残っているのは、中学や高校の頃にバレー部の合宿で出されたことです。他県のチームを呼んで、うちの学校の校舎で合宿をすることが多かったんです。その時に、親たちが集まってだまこ餅鍋を作ってくれました。
結構大量に作るので親たちも大変だったと思いますが、ちょっと遊び心をもって作ってくれていました。普通に丸形に作るだけでなく、何個かをハート形にして、鍋からハート形を取ったら当たり、と。

家で親が作る料理で好きだったのは、卵焼き。中学校からずっとお弁当でしたけど、必ず卵焼きが入っていました。うちの卵焼きはちょっと甘いんですね。それを私は、お弁当の最後の締めとして食べていました。ご飯と卵焼きは最高です。
私は日本代表の海外遠征で、たくさんの国に行きました。その時は必ずしょうゆを持参し、肉や野菜にかけて食べていました。

私はなんでも食べられるので、海外での食事で困ることはありません。その国のおいしいものを食べようという気持ちが強かったんです。それでもしょうゆがあると、なんとなく日本を感じられるんですよね。
ロンドンオリンピックの時は、最初の数日間は選手村の食堂で食べました。欧州の料理、アジアの料理……といった感じで、世界各地の料理のブースがあって、好きなものを取って食べるんです。
それとは別に、JOCが日本選手やスタッフのために、特別な棟を用意して日本食を食べられるようにしてくれていたんです。場所は選手村からすごく遠かったですけど。
私はそんなに食事で苦労していなかったので、選手村でいいかと思っていたんですが、ロンドンに入る前にスイスで合宿をしたりしたので、1カ月以上日本を離れていました。そんなこともあってJOCの建物に行ったら、本当の日本食に出合ってテンションが上がりました。日本のお米、煮物、焼き魚、みそ汁……。納豆を食べて感動したなんて、なかなかない体験ですよね。

オリンピックの2年後、私はフランスのチームに移籍しました。向こうのパン、チーズ、生ハム、スープ・ド・ポワソン(魚介類のスープ)などをとてもおいしく食べました。でも「土地の食事を取らないといけない」と頑張り過ぎたのか、反動である時期から日本食を食べたくなって。炊飯器を借りてご飯を炊くようになりました。アジアンショップで買った納豆とのりのつくだ煮があれば、いくらでもご飯が進みました。
各地でいろいろ経験を積んだ上で、やっぱり自分は秋田のお米と料理が好きなんだと感じています。
大好きな「あきたこまち」の他に、「サキホコレ」という新種のお米も作られるようになりました。初めて食べた時、不思議なことに秋田を懐かしく思う気持ちが湧いてきたんです。まだ「サキホコレ」を使っただまこ餅は食べていません。でも食べなくていいかも。というのも食感がいいので、つぶして握るのはもったいない。そんな気がするおいしいお米です。秋田に帰る楽しみが増えました。
(聞き手・菊地武顕)