青森県が発表した自治体やJAによる雪害調査によると、農業被害額は214億8100万円で、うちリンゴの樹体被害が206億4900万円と過去最悪となった。全体の96%が雪の重みや沈降圧による幹や枝の断裂で、残りは野ネズミなど野生動物による幹表皮の咬害(こうがい)や新芽の食害だった。
幹や枝の断裂は収量の低下や病害虫の発生、表皮の咬害は樹勢の衰退や枯死、新芽の食害は2年程度の不稔(ふねん)を招く。農家にとって極めて深刻な事態で、新たに木を改植しても収穫までの経営をどう維持するかが、課題となる。未収益期間の支援が欠かせず、改植するにも苗木や台木が足りない。政府などによる広範な支援が必要だ。
加工や輸出などリンゴ産業の裾野は広大で、収量低下を最小限に抑えるための行政やJAによる技術指導も重要となる。今回の雪害は、青森県で主流の「マルバ栽培」の木に被害の8割が集中した。大雪などに耐性のある栽培技術の見直しも求められる。

豪雪地帯の青森県では、もともとリンゴ栽培には向かない土地だったが、一大産地に築き上げた歴史がある。その過程で最適とされたのがマルバ栽培だ。リンゴ属で耐寒性のあるマルバカイドウを台木とし、環境適応力が高く、経済寿命が数十年と最も長い栽培法だ。防除や収穫の作業性を良くするため、樹高を抑え横に太い枝を張らせた樹形は県特有の技法だっただけに、関係者の衝撃は大きい。
調査結果を発表した宮下宗一郎県知事は、マルバ栽培の木に被害が多かった要因について、「雪の降り方と雪質が変化している」ことを挙げ、「気候変動の影響が少なからずあるのではないか」と述べた。近年の気候変動に応じて栽培法も見直す時にきている。これまで雪害は、乾いた雪が降る厳冬期の2月に起きていたが、今年は年末から湿った重い雪が短時間で大量に積もり、2月までに豪雪と融雪が繰り返し起こった。湿った雪は乾いた雪より10倍重く、1立方メートル当たり500キロになる。被害が集中した八甲田山系や岩木山系の裾野では、高さ2、3メートルの木がすっぽり雪に覆われ、枝折れなどの被害が広がった。
気候変動などから食と農業をどう守るか、抜本的な対策が求められている。