[論説]自給率向上の方策 食品産業との連携密に
自民党は今月上旬、小泉進次郎農相に対し、食品産業による国産原材料の利用拡大などを求める提言を出した。輸出促進や環境調和とも連動させ、持続可能な食品産業の発展を求めた。
農水省は、「持続的な食料システムの確立」に向けて2024年度の補正予算で47億2100万円、25年度は1億4500万円を計上。食品産業と産地が連携することで農業基盤を維持し、地域の雇用促進や地方創生につながる。
ウクライナ危機以降、小麦をはじめ穀物や資材価格が高止まりし、しわ寄せは農家だけでなく国民全体に広がっている。輸入依存体質のままでは、食料安全保障のリスクは高まるばかりだ。同省が示す諸外国のカロリーベースの自給率(21年)はカナダ204%、フランス121%、米国104%、ドイツ83%、英国58%などに対し、日本は38%と低迷する。自給率向上につなげるには、国産の利用拡大が不可欠となる。
生産基盤の強化へ、異常高温などの気候変動に対応した持続可能な産地づくりも重要だ。環境負荷の軽減を目指す同省の「みどりの食料システム戦略」実現には、地域やJAを挙げて有機農業など環境保全型農業を推進すべきだ。国産の価値を理解し、買い支える消費者を増やすとともに、再生産できる所得の確保へ政府による支援が欠かせない。環境負荷を減らした農産物であることが、ひと目で分かる「温室効果ガス削減マーク」の取り組みが参考になる。土壌への炭素貯留や、緑肥の活用などに応じて温室効果ガスをどれだけ削減したかを算定し、星印で表す。環境に配慮した国産農産物を消費者が選んで食べることで、日本の農業を支えることになる。
生産者と消費者、産地と食品産業が共に支え合う「対等互恵」の関係を構築する時だ。
農家の高齢化や離農、廃業が止まらず、生産基盤の弱体化は進む。米の価格上昇で起きた混乱は、他の農畜産物でも起こり得る。農業が先細れば、誰が日本の食を支えるのか。農家が意欲を持って再生産できる所得を得られなければ、政府が推し進めるスマート農機も導入できない。
農業と食品産業は車の両輪だ。連携を密にし、国産原料の活用を推進することが、危機に強い生産基盤を築き、自給率向上につながる。