24年の輸出額は前年を6%上回り、過去最高だった22年(475億円)に次いで多かった。世界的な健康志向の高まりで日本食が注目されて海外で日本食レストランが増え、日本酒の輸出も増加した。上位5カ国・地域(中国、米国、香港、韓国、台湾)で輸出額全体の8割を占めるが、それ以外の国・地域でも増えた。10年前に62だった輸出先は80に広がった。

日本酒の輸出をけん引する「獺祭」の旭酒造(山口県岩国市)は昨年、パリで著名なシェフと連携した居酒屋風の店を開店し、「今まで日本酒に接点がないようなお客がたくさん来る」(桜井一宏社長)と手応えを感じている。同社は全体の輸出額を現在の8倍の700億円に増やす考えだ。
近年存在感を増すのが高級な日本酒だ。世界全体への1リットル当たりの輸出額は24年には1400円となり過去最高となった23年と同水準で、10年前の2倍に上昇した。最も高いのが、香港で同2539円だ。
「百光」「弐光」などの高級日本酒ブランド「SAKE HUNDRED(サケハンドレッド)」を展開するClear(東京都渋谷区)が狙うのは、200兆円とも言われる世界の高級品市場だ。同社商品のアジアでの流通価格は1本(720ミリリットル)約6万~10万円(台湾の例)で、国内価格を上回る。昨年香港でレストランオーナーやソムリエなど日本酒専門家向けの試飲会を開いたところ、納入を即決する業者もいた。タイでは、個人の富裕層を抱える代理店や高級飲食店を販路に持つ代理店と契約した。アジアで高級市場の開拓を進めており、輸出を始めた台湾では「日本酒はスタイリッシュで現代的な飲み物という反応が多い」(生駒龍史社長)と若者の支持も高いという。
輸出をさらに伸ばすには、4月からの大阪・関西万博に合わせたPRなど増加する訪日観光客向けの対策も重要になる。
(玉井理美)
