[ニッポンの米]再生産できる米価 CSA再脚光 消費者と信頼関係 市場に左右されず
売値 自ら設定
全国に先駆けてCSAに取り組む宮城県大崎市の「鳴子の米プロジェクト」。地域の農業を持続させ農家が安心して稲作できるよう、必要な価格を自ら設定し、米を予約購入する消費者を地域内外に確保する仕組みを構築した先進地だ。プロジェクトは今年で20年を迎える。
生産資材高騰で、長年変えていなかった米価を2024年産から10%値上げして事前販売した。25年産の米価は7月に決定、提示する。プロジェクトの農家は11人。昨年から業者がプロジェクトの提示より高い価格を提示し、各農家を回っているという。それでも、代表で米8ヘクタールを作る農家の上野健夫さん(66)は「長年かけて消費者と、売って終わりという価格だけではない関係を築いてきた。農家の再生産価格がわれわれの原点。改めて生産コストを考え、農村の実情をつまびらかにした価格を考えたい」と話す。
既存客大事に
神戸市でCSAに取り組む農家の大皿一寿さん(57)は5年前から米価を変えていない。2・6ヘクタールで米を有機栽培し、25年産の売り先は既に決まった。米の確保について、平年はまったくない問い合わせが今春は多かったが、新規開拓よりこれまでのつながりを重視した。大皿さんは「これまでもこれからも市場価格ではなく、再生産価格で売る。価値を分かる消費者とのつながりを大切にしているから、米価は変えない」と話す。
CSAに取り組む神奈川県大和市の「なないろ畑」の畑中達生さん(59)も農作物の価格は据え置く。「こんな時だからこそ会員には安心してほしい。それに、市場が高いからといってうちも高くすると、今後市場価格が下がれば安くしなければならなくなる。それは持続可能ではなく、目指す関係ではない」と強調する。
(尾原浩子)
[ことば]CSA
消費者が野菜や米などの代金を生産者に前払いし、消費者と農家がつながる仕組み。農家は資金繰りが安定し、消費者は農家と直接関わり、地域コミュニティーとのつながりが深まる。