財務省貿易統計によると、干しシイタケ含むキノコ類の輸出額は、比較可能な2021年から24年は約10億、11億円で推移。24年の輸出先の最多は香港で、米国、台湾と続く。タイなど東南アジアでも需要が見込まれ、宮崎県産の原木シイタケを扱う卸問屋の飯干商店(宮崎県日向市)は「安価な中国産の菌床シイタケと比べられる小売向けよりも、食材にこだわる日本料理店や高級志向の外食向けの展開が有望」とみる。
まだ日本産の原木シイタケを知らない消費者も多い中、台湾で大好評を博した例がある。台湾のレストランチェーンの「台湾ロイヤルホスト」では1月中旬から1カ月間、11店舗で宮崎県産原木シイタケを使ったハンバーグとステーキを提供した。贈答用に、木箱と紙箱入りの「厚肉どんこ」も販売。企画したのは、日本と台湾を拠点とする商社の佐藤貿易(埼玉県春日部市)。公式サイトや交流サイト(SNS)などで集客し、合計1714セット、日本円で約500万円を売り上げた。
来店客に行ったアンケートでは回答者87人のうち約99%が満足と答えた。味・香り・食感の全てについて評価が高く、人に贈りたい」との声もあった。購入時に考慮する点として半数以上の人が「品質」と答えており、佐藤貿易の笹子秀憲社長は「トレーサビリティー(生産・流通履歴を追跡する仕組み)が鍵」とみる。

欧米やアジアなど世界各国・地域への干しシイタケの輸出実績がある杉本商店(宮崎県高千穂町)は、米ニューヨークの人気レストランでイベントを開催。シイタケなどキノコを使ったギョーザや寿司、ラーメンなどを提供し、好評だった。杉本和英社長は、和食を現代風にアレンジした「ネオ和食」への活用や、ビーガン向けに独特なうま味と食感を打ち出すことが効果的だと分析。大阪万博でも「ネオ和食」の試食を提供する予定だ。
保存期間が長くなり、うま味や食感が向上する冷凍での輸送・販売も有望だ。シイタケ専門問屋の本吉(宮崎県日向市)は、台湾で冷凍生原木シイタケの試験販売を行った。耐水性のある包装資材を使うなど、工夫して輸送。日本では冷凍シイタケのドリップがネックとなるが、台湾では気にしない人がほとんどで「品質が良いものであれば買ってくれる」と実感する。
(冨士ひとみ)