農水省によると、23年の瓶牛乳(500ミリリットル未満)の生産量は、前年比10・9%減の4392キロリットル。13年と比較すると、69・6%減少した。同時に、瓶牛乳を取り扱う工場数は半減し、大手乳業メーカーによる瓶牛乳の終売が相次いでいる。直近では、明治が3月末をもって「明治牛乳」や「明治コーヒー」などの販売を終了した。瓶洗浄機の老朽化やガラス製造工場の撤退などで、瓶の調達も難しい状況だ。
瓶牛乳の生産が落ち込む背景には、消費者のライフスタイルの変化がある。宅配や学校給食で定着していた瓶牛乳も、スーパーなどで手軽に購入できる紙パック牛乳に押され、需要が減少。衛生管理や利便性の観点から、瓶牛乳の購入機会が縮小している。

生産が落ち込む一方で、手堅い需要に応えようと工場を新設したり、日常に溶け込む飲食場面を創出しようとしたりする動きも出ている。西日本を中心に16の生協で構成するグリーンコープ共同体(福岡市)は3月、国産飼料の製造から乳牛の飼育、瓶牛乳の生産を一貫して行う瓶牛乳工場を新たに稼働させた。年間700万本の瓶牛乳を生産でき、会員からの堅調な需要を続けている。
100年以上、瓶牛乳の生産に携わる山村乳業(三重県伊勢市)は、観光名所・伊勢神宮の参道に直営店を構える。観光客からの需要は高く、24年度の売上高はコロナ前の19年と比較して2割近く増えた。スポーツジムでの常設など、日常の一部に瓶牛乳が溶け込む飲食場面の創出も見据える。
(廣田泉)