埼玉県熊谷市の小川諒平さん(36)は、マルチに定植用の穴を開ける器具を自作し、作業を省力化している。食卓のカセットコンロなどで使うガスボンベとバーナーをパイプの先に取り付け、その熱で温めた製菓用のプリン型をマルチに当てて円形に溶かす。市販の穴開け器で課題だった土やマルチを取る作業などが不要になり、穴開けにかかる時間は5分の1だ。製作費も2000円ほどと安い。
小川さんは、50アールで約80品目の野菜を栽培する。定植する野菜によって穴の大きさが異なるため、穴が開いたマルチは使わない。従来は、円柱の底を尖らせた市販の穴開け器でマルチに穴を開けていたが、器具に土が詰まったり、切り抜いたマルチが風で飛んでいったりして時間がかかっていた。穴を開けるのに腰を曲げるため、腰痛に悩んでいた。
そこで開発したのが「熱式マルチ穴開け器」。パイプの先にはプリン型を付ける。いずれもステンレス製。型によって穴の大きさも変えられる。
バーナーに火を付けてプリン型が温まったら、歩きながらそれをマルチに押しつける。20メートルの畝は1分ほどで穴が開けられ、作業時間は市販品の5分の1になった。熱でマルチが縮むため、切り抜いた部分の回収の手間も省ける。パイプの長さは、市販品より20センチほど長い95センチ。身長が182センチの小川さんが腰を曲げずに作業できるように長くした。歩くのと同じスピードで穴が開けられるという。
材料はホームセンターや100円ショップで購入でき、2000円ほどでそろえられる。250グラムのカセットボンベ1缶で10アールほど作業できるという。
小川さんはエンジニアとして10年働き、農業大学校などを経て、2年前に就農した。小川さんは「初めから農機全ては買えない。ないものは作るをモットーに、自分で工夫して物を作る過程も楽しい」と話す。
(後藤真唯子)
