
田植え機は通常、進行方向には苗が1列に並ぶ。だが折り返した後は、進行方向に対して90度横の直交方向には、苗はそろわない。位置を微調整して植え始めをそろえても、水田はぬかるんでいるため田植え機の車輪が滑り、徐々にずれていってしまう。
この田植え機は、植え付け部を人工衛星からの位置情報で制御する。田植え機が最初の直線を走る際に、直交方向に30センチの等間隔で仮想の基準線を設定。折り返して以降は、この基準線の上に来たら苗を植えていく。
両正常植えは、除草剤に頼ることができない有機栽培で重宝される。有機栽培では田植え後、田面にレーキなどをかけて、雑草をからめ取ったり、濁らせて雑草の成長を抑えたりする。乗用の除草機では、株を巻き込まないように植えた方向と同じ向き(条間)にしか走らせられず、直交方向(株間)の除草は十分にできなかった。両正条植えはこの課題を解決できる。
今年の試験地の一つである千葉県いすみ市では、4月下旬に「コシヒカリ」で両正常植えをした。1ヘクタールで試験に協力する農業法人・ライスフィールドの代表、實方亮太さん(34)は「大規模に無農薬・有機栽培をしたいが、雑草が一番の課題。両正条植えで除草効率が上がり、10アール当たり7俵(420キロ)は取りたい」と話す。

試験は、千葉県農林総合研究センター、農機メーカー・みのる産業(岡山県赤磐市)も協力。5月に3回にわたって、同社の乗用除草機を縦横どちらの方向にも走らせて、除草効率を確かめる。
もともと両正条植えという植え方は、田植え機が普及する前、人が手植えをしていた時代に、株に満遍なく光や風が当たるように、手除草がしやすいようにと取り入れられた歴史がある。世紀を越えて、現代の最新技術を駆使してよみがえろうとしている。
(古田島知則、撮影=染谷臨太郎)