おかげで農家さんとの交流もでき、農作業の現場に招かれることもあります。稲刈りの時にコンバインに乗せていただいたり、芋掘りをさせていただいたり。貴重な体験をさせてもらっています。
豊後大野市は「大分の野菜畑」と言われるほど農業が盛んで、おいしい野菜はもちろん、お米も果物もキノコ類もたくさん取れます。特に「甘太くん」というサツマイモが有名で、大分のローソンでは「甘太くん」の焼き芋が買えるんですよ。
私が合宿に行くのは冬場が多いので、皆で練習上がりにたき火をしつつ、農家さんから頂いたサツマイモで焼き芋を作って食べ、温まるということをよくやっています。地元のものを食べるのが本当に大好きな私にとって、農家さんとつながりがあるのはありがたくすてきなことだなと感じています。 私の趣味の一つに、釣りがあります。小さい頃から家族と池などで釣っていたのですが、その後しばらくは離れていました。10年前くらいですかね、大分県に住む釣具屋さんと知り合いました。そこからその方に海釣りに連れて行ってもらうようになって。タイやイカなどを釣るようになりました。
合宿先のホテルから海までは車で30~40分かかるので、オフの日に釣りをする時は気合を入れて行きます。自分で釣った魚はできれば自分でさばいた上で食べたい。私はまだそれほど上手に魚をさばけませんが、釣ってきた魚をホテルの方に手伝っていただいてさばき、料理をしてもらうこともよくあります。
釣り具屋さんによると、アユなどの渓流釣りもすごく楽しいそうですが、私は全くやりません。普段川にいることが多いので、せっかくのオフの日は、競技から離れるという意味でも川ではなく海に行きたいんです。釣りをしなくても海にいるだけで気分がリフレッシュします。川釣りをする人からは、カヌーで川を進むのがうらやましいと言われます。普通の人が入っていけないような場所までカヌーでスイスイと行けるから、と。そうなのでしょうけど、私は海釣り一本です。
私は魚が好きですし、ご飯も好きですから、当然おすしが大好き。海外遠征の時には、現地の方がお勧めする日本食レストランに行っておすしを食べることはよくあります。料理だけでなく、日本人のシェフの方と日本語で会話することもできるので、楽しい時間が過ごせます。おかげで心もリセットされます。 リオオリンピックの時は、選手村の食堂の他に、ジャパンセンターという日本選手限定のサポートハウスが設けられ、日本食を食べられるような環境をつくっていただいていました。私は試合前であってもおすしを食べたいくらいなんですが、ジャパンセンターにはさすがに生魚は置いてなかったんですね。それで焼き魚を食べました。
もうすぐパリオリンピックです。既に何度か行っていますが、パリはパリで魚がおいしいんです。バケットやクロワッサンなどパンもおいしいですよね。あまりオリンピックということを意識せず、今までと変わらずに現地のものを楽しんだ上で、本番に臨みたいと思います。
(聞き手・菊地武顕)
やざわ・あき 1991年、長野県生まれ。カヌー選手だった父の指導で小学生の時から競技を始める。2011年からの4連覇を含め、NHK杯/日本選手権で8回優勝。強豪国スロベニアに拠点を移して強化を続け、18年のアジア大会で日本女子として初の金メダル、20年のワールドカップで日本女子史上最高の7位入賞。リオデジャネイロ、東京に続き3度目の五輪となるパリ大会での活躍が期待される。