今は90代の祖母がスペースを縮小して、1人でトマトやナスなどの野菜やイチジクなどの果物を作っています。体も小さいのに、どうしてこんなに頑張れるのと、驚くくらいパワフルです。スーパーなどで、生産者の名前が付いた野菜が売られていますよね。祖母も定期的に出荷しています。
数年前まで温室がありました。そこでメインに作っていたのは、メロン。私たち孫は、メロンを1人何個も食べさせてもらいました。
祖父母が温室に行く時、一緒に連れていってもらったこともあります。水をあげたり、温室の窓を開けたり閉めたり。朝の3時や4時に起きて夕方まで仕事をしたのに、夜も何回か温室に行っていました。農家の人って大変だなと感じ、とても尊敬しています。
特に白いご飯が苦手でした。家族や親戚で集まって食事をする時、白いご飯を食べきるまではごちそうさまにならないじゃないですか。「全然食べてないね。もっと食べなさい」と言われるのが、すごいプレッシャーでした。
こちらは食べたくても食べられないのに、そういうことを言われても。ご飯を食べることがノルマみたいに感じられ、味を楽しむことなどできませんでした。
でも祖父母が作った野菜は、ちゃんと食べました。心情に訴えられますよね。「これはおばあちゃんが作った野菜よ」と言われたら。静岡に泊まりに行った時、私たちよりも早く起き、夜も遅くまで働いているのが分かっているので。祖父母の作った野菜はおいしく、進んで食べていました。

私は21歳の時に、婦人系の病気をしました。手術をしてホルモン値が整ったのか、食欲が増したんです。ご飯がおいしく感じられるようになったんです。白いご飯を食べるようになったら、他のおかずもおいしく食べられるようになりました。すると、肌が変化したんです。それまですごくボロボロだった肌が整って、とてもきれいになったんですね。
食生活が変わったおかげで、今はとても健康です。仕事柄不規則な生活になりがちですが、食については気を使っています。
自分が「食べたくない」という経験をしてるので、食べようとしない子どもの気持ちも分かります。無理強いはせずに、一緒にご飯を丸めておにぎりを作ったり、「これが伝説のニンジンですよ」と言ってから料理をしたりして、食に興味を湧かせるようにしています。農家さんが丹精している過程を知っていますから、食べ物を粗末にしないように心がけています。
(聞き手・菊地武顕)