通潤橋は江戸時代の1854年に、水源の乏しい白糸台地に農業用水を送るために建設された。今も農業用水施設の機能を維持し、白糸台地の棚田など約110ヘクタールの水田を潤す。国内最大級の石造りのアーチ橋で、長さ78メートル、高さ21・3メートル、幅6・6メートル。通水管の長さは約120メートルになる。
国などによると、水を送る「サイホン」の仕組みが、耐久性に優れた石管とアーチ橋を一体化したもので、近世石橋の傑作と評価する。また鋼管やコンクリート管が用いられる以前の近世かんがい施設としては他に類がないとしている。
関連して、建設に従事した石工など関係者の氏名が記された「石碑」、当時の現場監督の「御小屋」、独創的な技術が創出された過程を裏付ける「関係文書」なども併せて国宝に指定される。
現在も通水管の維持・管理に携わり、農業を行っている通潤地区土地改良区の阿部主税理事長は「国の宝として認められたことは誇りに思う。今後の維持管理の励みにしたい」とした。
同町では、通潤橋を生かした米のブランド化や交流イベントも定着している。山都町の梅田穰町長は「通潤橋は今日でも地域の農業を支えており、自然と共生してきた山都町の暮らしを象徴するもの。魅力を知ってもらう絶好の機会になる」とコメントした。
<ことば> 国宝
建造物や工芸品、歴史資料など有形の文化的所産で、歴史上、芸術上、学術上価値の高いものを「有形文化財」と呼ぶ。このうち、世界文化の見地から特に価値が高いものを「国宝」に指定する。
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