<ことば>所有者不明農地
不動産登記簿を確認しても所有者が分からない農地、もしくは所有者は分かっても所在が不明で、連絡も取れない農地。
所有者不明農地の調査は初めて2016年に行われ、2回目の今回は21年10月に着手した。全国1702の農業委員会が各農地台帳を基に、相続未登記面積と、住民票の転出などで所有者の生死が確認できない面積を割り出し、農水省経営局が集計・分析した。
全国に計102万9101ヘクタールあり、全耕地面積に占める割合は前回の20%から24%に上昇した。中部以北の都道県は10~20%台、近畿以西の府県は30~40%台と明らかな“西高東低”を示した。
高いのは高知43%、鹿児島40%、沖縄36%、京都36%、岡山35%の順。低いのは北海道7%、福島12%、静岡12%、神奈川13%、新潟15%。前回を上回ったのは37道府県、下回ったのは長野や熊本など8県、同率は2都県。所有者不明農地中の遊休農地の割合は6%と、現状では圧倒的に耕作中の農地に多い。
同省農地政策課によると、相続権者の多くが都市部で働くなど農業に従事していないことが背景にある。相続放棄の他、相続しても登記していないケースが目立ち、長年借り受けて耕作してきた人が高齢で離農した後に、未登記が表面化。登記せずに数十年が過ぎると、権利関係をたどるのは困難で、担い手がいても活用が進まないとの問題を抱える地域が増えている。
同課の担当者は「基幹的農業従事者が20年で半数に減り、専業の担い手への集約が急務となっている」と語る。
一方、国土交通省によると、全国の所有者不明土地の面積は九州本島(367万8000ヘクタール)を上回る410万ヘクタールで、国土の1割に及ぶ。周辺環境の悪化に加え、民間取引や公共事業を妨げているとし、農地の集約問題とともに政府が相続登記の義務化に踏み切る要因となった。