異例の猛暑で米等級低下 主産地「災害だ」 農家減収懸念、追加払いするJAも
トップ産地の新潟県では、気温の影響を受けやすい8月の出穂期に高温となり、少雨に見舞われた。でんぷんを十分に蓄積できず白濁する白未熟粒など高温障害が広域で発生している。
JA全農にいがたによると、19日時点で全農集荷分「コシヒカリ」は1等がほぼなく、2等が3割、3等が7割を占める厳しい状況。今後収穫が進んでも、1等米比率が急激に回復するのは見通しにくいという。
新潟市など、県内で最大の2万5000ヘクタールの水田を抱えるJA新潟かがやき経営管理委員会の遠藤一雄副会長は、14日の新潟米県外初出荷式で、「この夏の過高温は災害だ」と訴えた。
農家は過乾燥で起こる胴割れを防ぐため収穫時期を早める。長岡市で「コシヒカリ」を中心に水稲を47ヘクタールで栽培する長部茂幸さん(37)は、「土づくりや水管理を徹底したが、いつもの年より小さく白い粒が多い。胴割れになると価格が格段に下がる」と収穫を急ぐ。
隣県の富山県でも「白未熟粒が例年より多い」(県農産食品課)。高温耐性を持つ品種「てんたかく」でも発生している。県中部のJAは例年「コシヒカリ」の1等米比率が9割程度だが、今年は4割を切り、担当者は「ここ十数年で記憶にない状況」と明かす。
東北地方でも収穫がスタートし、山形県のJA庄内たがわは11~14日の農産物検査で1等米比率が55%となり、例年(9割以上)と比べると低調だ。県内の他のJAでは2割にとどまっている。関東では茨城県の県西、南部などで1等米比率が低迷し、県によると7日時点で「コシヒカリ」は40%台という。
白未熟粒の発生などから農産物検査で等級が格下げされると、農家に支払われる概算金も減額となり、所得が減る恐れがある。3等米の場合、概算金は1等米よりも2割程度低い。このため新潟県内では、3等米に対する追加払いを打ち出すJAも出ている。
等級は歩留まり目安 安心して食べて
農産物検査による玄米の等級は、精米にする際の歩留まりの目安を示す。1~3等などと格付けする上で、白未熟粒は、「整粒」の割合と「形質」の判断に影響する。等級の格下げは、必ずしも食味に関連するものではない。
米の食味ランキングを実施する日本穀物検定協会は「白未熟粒は食味が劣るとは限らない」と指摘。等級が格下げになった米であっても、「等級は整粒などを表す基準で食味を評価するものではない」と強調する。日本精米工業会も「白未熟粒があっても、安心して食べられる」としている。