種子の海外生産の割合が多い最大の理由は、品質を高めるためだ。種苗会社によると、種子は、原産地に気候が似た場所で栽培すると品質の高いものを採取できる。一方、国内で流通する野菜の原産地はほとんどが海外で、日本原産の野菜は水菜やウドなどごく一部。このため、種苗会社の生産拠点も海外に偏っているという。
日本の国土の狭さも、国内で種子を生産するハードルになっている。種子は、交配時に別の品種の花粉が混じらないよう、他の畑と離れた畑で生産する必要があるが、国内では適した場所が少ない。ハウス内でも生産できるが、コストがかかるため、国内の生産拠点は山奥や離島を利用する場合が多いという。
質問者の男性は、種子の海外依存に不安も感じていた。何らかの事情で種子が輸入できなくなれば、国内の食料生産に影響が出るのではないかとの指摘もある。こうした懸念について、農水省は「想定しにくい」とみる。
同省によると、種子の生産拠点は幅広い国に分散。2021年の野菜種子の輸入額が大きい順に並べると①チリ②米国③南アフリカ④イタリア⑤中国――となる。一部の国で生産が困難になっても、他国の拠点でカバーできるという。
種苗会社は、3、4年分の種子の備蓄もしている。新型コロナ下で種苗会社の社員の海外渡航が困難になった際も、種子の供給に影響は出なかったという。
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