借りたい人が情報掲載 貸したい人「この人なら」 さかさま不動産
全国で空き家問題が深刻化する中、空き家を貸したい人が借りたい人を募る従来のマッチング方法とは逆に、借りたい人が貸したい人を探す新しいサービスが広がっている。三重県のベンチャー企業が「さかさま不動産」と名付けて4年前に始めたところ、10都府県で27件が成約し、カフェやゲストハウス、書店などに生まれ変わった。国土交通省は「空き家の流通につながる」と期待、同様のサービスを始める自治体も増えている。
ベンチャー企業は同県桑名市に本社を置く「On-Co」(オンコ)。代表の水谷岳史さん(36)が愛知県内で空き家を探していた時、「知らない人」に貸すことをリスクと捉える所有者の多さを知り、着想した。
このサービスは、空き家を借りたい人が名前や顔写真、自己紹介、探している地域や使用目的を同社のサイトに掲載。貸したい人が借り手を選び、アプローチする仕組みだ。
2020年6月のサイト開設後、地方に移住して店を開きたい人や、2拠点生活を始めたい人が次々と掲載。これまでに中部地方を中心に東京や京都など10都府県の空き家27件が成約した。現在、「ユズの皮を使ったアロマの工房を始めたい」「地元の人と観光客が交流できる宿泊施設を作りたい」など、借りたい人の登録は300件に上る。
国交省が空き家所有者3900人を対象に行った20年調査によると、将来の利用意向について3割が「空き家にしておく」と答えた。一方でオンコによると「いい人がいたら貸したい」「地域が活性化する人に貸したい」人は多く、同省まちづくり推進課は「(さかさま不動産は)潜在的な空き家の流通につながる」と期待する。
同様の仕組みは自治体にも広がる。福井県大野市が20年12月から、石川県小松市も22年12月から、公式ホームページで空き家を探している人の情報提供を始めた。北海道小清水町は今年1月から「さかさまバンク」と名付けてスタート。町建設課の担当者は「空き家を利活用したい人の存在がわかる『さかさまバンク』を通じ、自分の所有する空き家に価値があると知ってほしい」と期待する。
空き家問題 2023年の住宅・土地統計調査によると全国の空き家数は899万戸で、住宅数に占める空き家率13・8%といずれも過去最多を更新した。使用目的のない空き家の割合は鹿児島県が13・6%と最も高く、高知、徳島、愛媛など西日本を中心に高い傾向を示した。