2023年産米の需給の逼迫(ひっぱく)感が強まっている。昨夏の猛暑の影響で米の出回り量が下振れした中で、販売は前年を上回るペースで進む。民間在庫量は前年を1割下回り、過去5年で最少の水準で推移。不足感から業者間の取引価格も上昇している。
需給の判断材料となる出荷・販売段階の民間在庫量を見ると、直近の昨年12月時点で、37道府県が前年を割り込み、299万トンと減少した。特に出荷段階の減り幅が大きく、前年から29万トン減った。
産地の集荷数量も伸び悩む。前年比5%減。北海道や茨城県など、作況が100を上回る主産地でも、集荷量が前年水準に届いていない例があり、「作況より収穫量が少ない」(産地関係者)とする声がある。米卸などは「計画の取引量を満たせない産地が出てきている」と課題を挙げる。
猛暑の影響による全国的な米の等級低下も尾を引く。玄米の調整や精米時の歩留まりが大きく悪化し、「同じ量の精米を出荷するためには、例年より多くの米を調達する必要がある」(大手米卸)。
米の販売が前年を上回るペースで推移していることも要因だ。インバウンド(訪日外国人)の増加や人流の回復が相まって、業務用が堅調。家庭用も、低価格帯の商品を中心に引き合いが強まり、販売が上向いている。
5日に米穀機構が公表した向こう3カ月の需給見通し指数は基準の50を大きく上回る67で、「需給が締まる」とした見方が強まる。
需給の逼迫感から米価はじりじりと上げる。直近12月の産地と米卸などの相対取引価格は、前年同月比11%高の60キロ1万5390円。前月比でも小幅ながら2カ月連続で上昇した。スポットで米を手当てする業者間の取引価格を見ると、1月下期の秋田「あきたこまち」の60キロ価格は1万7323円(税別)。9月下期からは16%上げた。取引を開くクリスタルライスの担当者は「市中に出回る米自体が少なく、高くても買う業者がいる」と明かす。
24年産の価格動向に注目が集まる。産地は資材高による生産コストの上昇分を価格に転嫁したい意向がある。ただ、先高感が強まることで24年産の作付けで主食用への揺り戻しがあれば、「米価が再び下落しかねない」と懸念する声も聞こえる。