改正案の審議は2024年度予算成立後の4月以降に本格化する見通し。特に重要な法案として首相が答弁に立つ「重要広範議案」に位置付けられるとの見方が強い。衆院によると、同議案となった場合、農水省提出法案としては15年の農協法改正案以来となる。
政府は同日、不測時の対応を定める「食料供給困難事態対策法案」や農地関連法改正案も閣議決定した。坂本哲志農相は27日の閣議後会見で、「農業者が楽しさとやりがいを持ち、国民に安定的に食料を届ける責務を果たしていく」と述べた。
食料・農業・農村基本法改正案は、食料安保を「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ国民一人一人がこれを入手できる状態」と定義した。食料自給率目標に加え、食料安保に関する複数の目標を新たに設定し、達成状況を少なくとも年1回調査、結果を公表するとした。
食料の価格形成について「持続的な供給に要する合理的な費用」を考慮するとの考え方を新たに位置付ける。費用の明確化など必要な措置を国が講じる。生産資材を巡っては、国内代替物への転換や備蓄支援、著しい価格変動時の影響緩和策を規定する。
農業の担い手は「効率的かつ安定的な農業経営」を重視。一方、「それ以外の多様な農業者」で農地を確保していけるよう配慮する方向性も打ち出した。農地の受け皿として期待する法人の経営基盤強化へ、「自己資本の充実」を促すとする。
[解説]審議尽くし将来像描け
基本法改正案は今後数十年の農政の在り方を決める重要法案だ。生産コストの高止まり、後継者不足に苦しむ農家や産地が明るい将来展望を描けるよう、審議を尽くす必要がある。
近年は日本の購買力低下や気候変動などで食料・肥料原料の輸入が滞るケースが生じ、現行法制定時には想定していなかった課題が表面化。生産者も高齢化を背景に急減する見通しで、食料生産の維持が危ぶまれている。
一方、重要局面にもかかわらず、これまでの農政見直しの論議は盛り上がりを欠く。食料の価格形成など、消費者にも関わるテーマがあるが、国民の関心が高まっているとは言い難い。
政府は基本法改正案など4法案の一括審議を求める。食料安保に関する目標の在り方や価格形成、担い手など論点は多岐にわたるが、十分な審議時間を確保し、深掘りしなければならない。未来に持続可能な農業・農村を残すため、これまでの政策には何が足りなかったのかを総括し、国民各層を巻き込んだ議論を期待したい。
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