「紅こうじ自体、使っていないのに、米こうじと混同して不安に感じている人が多い」。山形県でみそやこうじを製造する老舗メーカーの代表はそう話す。紅こうじ使用の有無などを問い合わせる電話が一日当たり10件程度かかってくるといい、都度、紅こうじを使っていないことを説明する。代表は「話すと理解してくれるが応対に時間が取られる」と疲れた声で話す。
記者が調べたところ、長野、愛媛県の複数のこうじメーカーや酒造会社で同様の問い合わせが相次いでいた。
こうじ菌に詳しい日本獣医生命科学大学の佐藤薫教授は「紅こうじと米こうじは全くの別物」と説明。みそやしょうゆ、焼酎などに使うこうじ菌は「アスペルギルス属」。日本酒やみそ、甘酒に使う黄こうじなどが含まれる。米こうじは黄こうじ菌を米に付着させ、生育したものだ。
一方、紅こうじ菌は「モナスカス属」。みそやしょうゆ、焼酎などに使うこうじ菌とは属性が全く別。赤い色をしており、主に加工品の色素・着色料に用いられるという。
食品に含まれる菌や微生物に詳しい東京農業大学の前橋健二教授は「プベルル酸は青カビから発生する天然化合物。紅こうじから検出されたとは聞いたことがない」と話す。混入の可能性について「ヒューマンエラーや意図的かを含め、さまざまな要因が考えられる」と指摘する。
「通常、こうじを作る過程で他の菌が混入することはない」と強調するのは、秋田県のこうじメーカーの代表。「適正な衛生管理だったか、施設や製造ルートの解明が必要」と訴える。