この餌を2022年から1500頭の繁殖和牛などに与えているのが栃木県那須町の敷島ファーム。牛1頭当たり10キロ(粗飼料+濃厚飼料)の餌を給与するが、このうち2キロを木材から作られた餌に置き換えた。飼料高騰が畜産農家の経営を直撃しているが、飼料価格高騰前の水準を維持できているという。
加えて、木材から消化率が低いリグニンを除去し、栄養価の高いセルロースを取り出したもので、牛のルーメン(第1胃)での発酵が緩やかな粗飼料と栄養価の高い濃厚飼料の特徴を併せ持つ。環境への配慮と牛に負担をかけない栄養補給ができる点も評価し、導入を決めた。産子の治療日数が通常飼養の子牛より2日短縮され、具体的な効果も出ているという。
五十嵐将光常務は「環境に優しい取り組みを数値で示し、将来的なゼロカーボンビーフのブランド化を目指す」と意気込む。
同ファームも含めて現在、宮城、兵庫などの酪農家や肥育・繁殖農家、完全混合飼料(TMR)センター、8県12件が採用。無償で餌の供給を受け、試験的に使っているケースも約30件ある。
日本製紙では増産に対応できる工場の整備も進めており、バイオマスマテリアル事業推進本部の都合正和・養牛飼料グループリーダーは「利用が広がれば日本の森が守られ、GHGの抑制に寄与できる」と語る。
海外依存脱却は必須
農水省によると、22年度の飼料自給率は26%と、30年以上横ばいが続いている。牧草や稲わらなどの粗飼料は78%と高水準ではあるものの、トウモロコシや大豆といった濃厚飼料では13%まで低下する。政府は「30年度に飼料自給率34%」の目標を掲げるが、依然として目標との隔たりは大きい。
また、国内の畜産農家における飼料供給割合は、可消化養分総量(TDN)ベースで粗飼料が20%、濃厚飼料が80%を占める。濃厚飼料は海外情勢や為替に左右されやすく、国産化が急がれている。