
食べることは生きる源だ。いくら頭で考えても、食に満足していなければ、考え方もずれてきてしまう。大人は、まずは好き嫌いなく、何でも食べてみる大切さを子どもたちに伝えてほしい。体づくりや栄養だけじゃない。食べる喜び、満腹感が人間としての幸せにつながる。
食べる喜びは、生産する人の喜びにもなる。農業は重労働で大変な面もあるだろうが、関心を持つ若い人も多いのは喜ばしい。必要としてくれる人の喜びのため、良いものを作るんだという強い思いを持ってほしい。
野球が上手になるには、苦労しなければならない。良いプレーをするには反復練習が欠かせない。健康とも戦う必要がある。農業も同じでしょう。土づくりから始まり、日々のしんどいことを乗り越えてこそ、良いものができる。結果が出た喜びで頑張れるし、さらにのめり込めるのではないか。
消費者はそうした苦労を理解し、食への感謝を忘れないでほしい。自給率を自分たちで上げるんだという気持ちを持ってくれたら、農業に関わる人も多くなるだろう。今は、消費者と生産者があまりにも離れすぎてしまっている。互いの立場をもっと理解し、感謝することが距離を縮めることになる。
世界的に活躍するスポーツ選手が増えているのは、スターが出てきて大きな目標になっているから。大谷翔平選手のような突き抜けた存在がいれば、子どもたちもさらに頑張る。そこからまた一流のスターが誕生し、土台が大きくなっていく。
一流になる方法は絶対にある。必要なのは「工夫」すること。情報はたくさんある時代。情報をどう集め、咀嚼し、取り入れるのか。自ら探し求め続け、挑戦を繰り返すことが道を切り拓く。
おう・さだはる 1940年、東京都生まれ。巨人で世界記録となる通算868本塁打。巨人、ダイエー、ソフトバンクで監督を務め、リーグ優勝4回、日本一2回。第1回ワールドベースボールクラシック(WBC)優勝監督。世界少年野球推進財団(WCBF)の理事長。同財団は1993年から「JA全農WCBF少年野球教室」を主催する。