みやぎ生協は国際協同組合年である来年度、産直ブランド「めぐみ野」を通じた生産者支援の規模を倍に広げる。同生協は毎年秋、商品購入1点当たり1円を積み立てて支援に充てるキャンペーンを開催。来年度は春にも行い、支援額を倍増させる。「農家がいなければ食べることはできない」として、協同組合間の連携を深め、産地維持を後押しする。
「めぐみ野」は、産地や生産者、栽培方法を定め、農家と生協組合員の交流を図る半世紀以上の取り組み。産地と「顔の見える関係」をつくろうと、1970年に角田市農協(現JAみやぎ仙南)と、豚肉や鶏卵などの取引を始めた。現在は、農畜産物や海産物、加工品を年間88億円(昨年度)売り上げる。
生産者応援キャンペーンは2021年秋に開始。コロナ禍で「めぐみ野」の出荷農家が急減したことに危機感を抱き、より直接的な農家支援を模索した。
生産者組織からの応募を元に審査、資材の購入費用などを助成する。22、23年度の2回、のべ20組織に計約670万円を支援。本年度も10組織に計300万円支援する予定だ。
キャンペーン期間中、「めぐみ野」商品は売り上げが5%程度伸びるという。同生協では、消費者の理解を得られていると判断。支援を希望する生産者が多いことから、来年度はキャンペーンを拡大することにした。
21年度に深刻な霜害を受けたJAみやぎ仙南角田梨部会は昨年度、約15万円の支援を受けた。霜害防止用資材を購入し、部会員らが今春、各園地で散布した。小野寺喜一部会長は「支援のおかげもあり、今年は実の成りが良い」と笑顔を見せる。
県民に占める加入率が74・2%と国内有数の同生協は、「めぐみ野」の農産物を全てJA経由で仕入れる。同生協産直推進本部の今野一彦本部長は「農薬の使用状況など安心して任せられる。協同組合間の協働を進めたい」と語る。
東北大教授 冬木氏に聞く

――みやぎ生協の組合員(消費者)や職員と産地の交流は半世紀を超えました。
社会の発展と共に生産・消費の間の距離が広がっている。食物がどう作られ、どう消費されるのか見えづらい中、お互いに知る機会になっている。
食物が作られる現場を知ることは、生協の店舗や宅配で働く若い職員の意欲向上にもつながっている。
――生協理事長に就任後、ご自身も足しげく産地に足を運んでいると伺いました。
JAの他、漁協も訪問している。海の資源を保護するための漁獲枠を巡る厳しい議論も、1人1票の原則があるからこそ理解を得ている。協同組合のメリットを感じている。
――生産者支援のため価格を上乗せしても、市場競争で負けて売り上げが減れば元も子もないといった価格転嫁を巡るジレンマをよく聞きます。
農家の窮状を理解し高い農産物を購入する人もいれば、そこまで意識しない人もいる。どちらにも応えられるよう、生産者支援にも幅が求められる。
みやぎ生協では、産直ブランド「めぐみ野」の米は、加算して仕入れている。産地維持のため、より具体的な施策も検討したい。
――生産者を支援する流通業者は他にもあります。生協の違いは何でしょうか。
互いの交流があるからこそ、価格が生産者に与える影響を知っている。ビジネスの論理だけでない。生産現場の窮状を「見ないようにはしない」のが協同組合の良さだ。
ふゆき・かつひと 京都大学大学院修了、2017年から東北大学大学院農学研究科教授、20年からみやぎ生協理事長を務める。専門は農業市場学。米の政策や流通にも造詣が深い。