有機農産物の集荷や販売を手がける北海道芽室町のアグリシステムは有機JAS認証を持つ農家55人と取引をしていて、そのうち、20人ほどが間作小麦を取り入れる。

中村さんの間作小麦は大豆の生育後期の9月上旬、大豆の畑の中に小麦の種をまく。作業は無人ヘリコプター業者に委託し、翌7月半ばごろに収穫する。間作小麦の利点として、中村さんは「雑草管理にかかる時間が大幅に減る」と話す。間作小麦を取り入れるまでは、大豆とは別の畑で小麦を栽培していて「それぞれの畑で除草をしなければならなかった」と振り返る。

現在は大豆の着花前の6、7月と、収穫前の9月の複数回、最大7人を雇って手取り除草を徹底。その農地に小麦をまくため「除草は主に大豆だけで済む」と中村さん。大豆の葉が日光を遮り表土を保湿するため「耕起しなくても活着する」という。「30ヘクタールで3品目を有機栽培するとなると、作業の効率化が極めて重要になる。間作小麦を導入した効果は大きい」と実感する。
有機栽培の間作小麦による省力化は、専門家の調査でも実証されている。酪農学園大学の荒木和秋名誉教授の調査では、小麦の栽培準備から出荷までの各作業の合計所要時間は、10アール当たり約30分。慣行の同約2時間30分の2割程度に減る。

高単価が収益下支え
省力化と合わせて、中村さんが重視するのが収益の確保だ。緑肥を輪作に取り入れるなどして2024年産は大豆は10アール当たり279キロ、小麦は同443キロを収穫した。有機JAS認証を取得後、化学肥料・農薬などの資材代が慣行栽培の時と比べて「年間300万円以上、節約できた」ことも後押しになっている。
生産面の工夫に加えて、「価格の良さもあって収益は確保できている」と中村さん。農産物はアグリシステムに出荷し、価格は「慣行の2~4倍」。同社は主に中小の納豆メーカーやパン店、大手飼料メーカーに供給している。
同社と出荷契約を結ぶ農家は増加傾向にあり、2021年までは2年に1人の増加率だったが、22年から急増。21年の27人から24年は55人と2倍以上に増えた。
同社は契約農家に対し、種まきのタイミングや品種選択、間作の指導、休閑緑肥の重要性などを説明。担当者は「栽培に必要な情報を丁寧に伝え、農家が有機に挑戦しやすい環境を整えている」と話す。
(関竜之介)
■大豆と同一農地で栽培するため耕起、除草を省力化
■化学肥料、農薬が不要でコスト軽減
■高単価が見込め、小麦は慣行の3~4倍に