ナラ、シイ、カシなどの樹木が枯れる「ナラ枯れ」を引き起こす害虫・カシノナガキクイムシで、害虫が潜んでいる穴に市販のノズル型殺虫剤を注入すると駆除できることを森林総合研究所などが明らかにした。殺虫剤は「園芸用キンチョールE」で、樹木で同害虫防除に使えるよう適用拡大した。全国で広がるナラ枯れを、入手しやすい市販剤で食い止められるとする。
ナラ枯れは、同害虫が幹に穴を開けて入り込み、持ち込まれたナラ菌が樹木の中にまん延することで起きる。穴は直径1・5ミリほど、周囲に排出された木くずがある。この穴に、殺虫剤のノズルをできるだけ深く差し込んで注入する。
研究では、同害虫の侵入から2週間後または4週間後に殺虫剤を注入すると、いずれも木くずの排出がなくなり、95%以上の同害虫を駆除できた。侵入から時間がたつと、穴が長く深くなって殺虫剤が届きにくくなる。
林野庁の統計で、ナラ枯れ被害は材木の体積で13万立方メートル(2023年度)。北海道で初めて確認されるなど被害は44都道府県に拡大している。林業や公園での被害に加え、シイタケなど原木栽培に使うほだ木供給への影響、ほだ場の環境変化、堅果類(ドングリ)の減少による熊の出没リスク増加--などが懸念される。
同剤は、桜のクビアカツヤカミキリ防除でも登録がある。
(古田島知則)
