飼料高騰痛手 都府県で深刻 自給に苦慮「耐えるだけ」
■膨らむコスト補填し切れず 群馬・酪農
「対策はない。耐え忍ぶのみだ」。前橋市で搾乳牛と育成牛合わせて約70頭を、家族3人と従業員1人で飼育する岩崎正徳さん(45)は、険しい表情を見せた。
岩崎さんは年間450トンの生乳を出荷し、約6000万円を売り上げる。配合飼料はJA全農ぐんまなどから月に計20トン購入しており「値上がり分は経営を直撃する」という。牧草15ヘクタールと青刈りトウモロコシ約7ヘクタールで飼料自給にも取り組むが、増やそうにも「人手が足りず、燃料代などのコストもかかる」と簡単ではない。
1年ほど前、高騰以前の配合飼料の価格は1トン当たり約5万円台後半だったが、この1年で同7万円台前半に値上がりした。高騰前で30%程度だった生産費に占める購入飼料費(粗飼料を含む)の割合は今年、40%程度に増す見込み。「生産費を抑えるには餌の質を下げるか、自分の休みを減らし人件費を抑えるしかない」と言う。
輸入原料の高騰で配合飼料価格が上昇した際の影響を緩和する、配合飼料価格安定制度での補填(ほてん)も、高騰の影響を受け止め切れていない。「長期的に価格が上がり続ける状況をカバーできない」とこぼす。
配合飼料価格の先行きは不透明だ。シカゴトウモロコシ価格は現在、5月の高騰時に比べれば下げたが、1年前に比べ3、4割高い。飼料関係者は「海上運賃や海外での穀物需要、為替などが影響してくるので情勢は見通せない」と言う。岩崎さんは「生産費の上昇を売値に反映してほしい」と要望する。
■業務需要低迷対策にも限界 愛知・養鶏
採卵鶏の飼養戸数が124戸(2021年)と全国最多の愛知県。鶏卵価格は現在、1キロ当たり200円を上回る程度(JA全農たまご平均価格、M級)。愛知県養鶏協会によると飼料高騰で鶏卵の生産原価は1キロ当たり約40円上がったという。
同協会会長で、美浜町で50万羽規模の農場を経営する齋藤利明さん(71)は、同制度の補填金などで価格上昇分の負担は半分程度に抑えられているものの、経営について「厳しいとしか言いようがない」と説明する。
農場では飼料コスト低減のため、飼料用米を約5%添加。今後も割合を増やす方針だが、限界はある。卵価は原価とは関係なく需給で決まる部分が大きいため「低迷している業務需要が回復してくれれば」と期待する。