[論説]猛暑で米の等級低下 “災害級”に国は支援を
主食用米の生産面積が日本一の新潟県は、猛暑による等級低下で、平年作に比べて農家の収入が84億円減ると試算した。1等米比率は、平年は80%だが、9月末時点で15%。等級による価格差で、収入は8%減となった。農家は今後、肥料や燃料代を支払うことになり、収入減は農家にとっては大打撃となる。
農水省の農業物価統計によると、2020年を100とした農業物価指数は今年8月時点で肥料が141、農薬は114と依然として高い数値を示している。品質を向上して収益を高めようと農家が最善を尽くしても、今夏の天候では、等級低下は避けられない状況だった。
水稲は出穂期に高温に遭えば白く濁った未熟粒などが発生しやすい。新潟県では、7月下旬から8月にかけて「コシヒカリ」など主力品種の出穂期に、平年と比べて3・6度も高い異常高温に見舞われた。8月の新潟市の平均気温は、那覇市より高かった。
農家からは「これは天災だ」との声が相次いでいる。北陸日本海側では、雨がほとんど降らない地域も多かった。新潟市は8月の降水量がわずか2ミリと、平年同月比(163ミリ)の1%だった。水不足で高温対策に有効な深水管理もできず、夜温は下がらなかった。
その結果、収穫した8割が3等米という地域もあり、経済的負担に加え、「いつまで稲が持つのだろうか」という不安を抱えての作業が続いた。概算金も1等米と比べて2割程度低くなることから、新潟県内では、3等米に対して追加払いを行うJAもある。
地球温暖化が進む以上、高温や渇水被害はどこでも起こり得る。高温耐性品種の開発が急務だ。政府は月内にまとめる経済対策の中で、高温障害に対応した生産体系の実証を盛り込んだ。ただ、それだけでは不十分だ。
求めたいのは、セーフティーネットの強化だ。米の等級低下による収入減を補填(ほてん)する収入保険などの対策への加入面積は、全体の3割程度にとどまる。米作中心の大型農家が加入する収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)も、等級低下は対象とならない。これに対応できるのは収入保険と水稲の農作物共済(品質方式)だが、いずれも加入率が低いのが実態だ。
制度の網から漏れてしまう多くの農家を救うことこそ、政治の役割ではないか。