[論説]発見相次ぐ「新顔雑草」 侵入防止へ具体策急げ
農研機構と森林総合研究所は、「日本は国際的にも外来植物の侵入が多い」と分析する。外来植物の年間侵入数は1854年の開国以降、1900年までは5種以下だったが、園芸向けに持ち込まれるなどで50年代後半には16種に拡大した。輸入相手国の固定化などを背景に近年は13種まで減ったものの、最大で12種の英国、同9種の中国を上回る水準だ。中には雑草化して農業に被害をもたらす種も含まれ、同機構は「さらなる侵入経路の解明が必要」とみている。
日本農業新聞は、専門家の協力のもと、農家ら産地関係者が注意すべき新顔雑草10種を選び、紙面で特集した。中でも南米原産の「ナガエツルノゲイトウ」は、草刈りによって切断された茎の断片からも再生し、「地球上で最悪の侵略的植物」とされている。水路や水田など日当たりの良い水辺の他、乾燥にも強いため畦畔(けいはん)などでも育ち、地域ぐるみで駆除に追われる産地もある。
欧州原産で、牧草として使われる「イタリアンライグラス(ネズミムギ)」も、田畑に侵入すれば強い繁殖力で小麦や水稲などの生育を阻害する雑草と化す。生産現場で広く使われるグリホサート剤に抵抗性を持つ個体も発見されている。北米原産の「アレチウリ」も、東北以南から九州まで広がり、旺盛なつるで大豆を覆い隠して収穫不能になるケースもあるなど、被害をもたらしている。
求めたいのは、2023年4月に施行された改正植物防疫法に基づく対応の早期具体化だ。国内には、輸入の飼料穀物などに種子が混入して侵入する場合が多いとされる。一方で雑草は検疫の対象外となり、「フリーパスで侵入し続けている」と課題を指摘する専門家もいる。
改正法は、病害虫と同様に雑草を輸入検疫の対象や、国内の発生動向を調べて情報を提供する発生予察の対象にできるようにした。農水省は、どの雑草を検疫や発生予察の対象にするのか、検討を進めているという。早急な対応と具体策が求められる。
雑草は病害虫と比べ、発生状況の把握や対策の検討などの体制が弱いとの指摘もある。長野県はJAグループなどと連携し、防除が難しい雑草の発生状況を把握し、農家に情報提供する県域の組織を立ち上げた。国を挙げたこうした体制整備も重要となる。