転作で子実トウモロコシ 長期的支援 増産へ必須
農水省によると、子実用トウモロコシの水田での作付面積は、2021年度が北海道中心に全国で約900ヘクタール。同省は22年産で、10アール4万円を助成する水田リノベーション事業の対象に加えるなど増産を後押しする。主食用米の需給均衡には前年産比で3%の作付け転換を必要としていることや、輸入トウモロコシ価格の高騰が背景にある。
転作での子実用トウモロコシの所得では、助成金も含め10アール約1万3000円だったとの、岩手県のある農場での事例(19年)がある。同省の試算では、大豆や小麦は同4万円を超え、面積当たりの所得では劣る。だが同年の同農場での作業時間は10アール1・4時間。水稲や大豆の数分の1~10分の1程度と短い。
こうしたことから農水省は「時間当たりの所得は高水準。限られた労力で規模拡大を進めるには有効な作物だ」とする。ここ数年、面積当たりの所得を比較して転作作物を選択する動きが広がるが、他産業では時間当たりの生産性を重視する場合が多い。数十~100ヘクタール規模の水田を経営する担い手や法人も増える中、「面積をこなせる」品目として選択肢となるだろう。
課題は販売先だ。先行事例では、地域内の畜産農家と直接契約するケースが多い。幅広い畜種に給与できるが、耕種地域と畜産地域は離れている場合があり、マッチングへの支援は欠かせない。
飼料用米は、JAが集荷し全農が買い取って飼料メーカーに販売する「全農スキーム」の導入で、作付けが広がった。子実用トウモロコシでも、官民が協力し、広域流通の仕組みを検討すべきだ。
機械投資も必要となる。収穫用のアタッチメントは国内メーカー製で80万~200万円ほど。播種(はしゅ)機や汎用(はんよう)コンバイン、乾燥機は大豆や麦と同じ機械が使えるが、新たに購入すれば大きな負担となる。同省が22年度予算案に盛り込んだ補助制度は継続・拡充が必要だ。
増産は、転作助成金による継続・安定的な支援が前提である。飼料用米では、22年産の水田活用の直接支払交付金で複数年契約加算が見直され、産地には戸惑いが広がった。輸入飼料の代替となる子実用トウモロコシは、畜産経営の安定と食料安全保障の確立に貢献する。生産の拡大に伴い財政負担も増えることが想定されるが、はしごを外すようなことがあってはならない。