世界的な異常気象や自然災害の多発を受け、温暖化による気候変動への対策が各国共通の課題となっています。国内外のあらゆる産業で脱炭素や環境負荷の低減、国連の持続可能な開発目標(SDGs)への対応が求められており、食や農の分野も例外ではありません。世界の温室効果ガス排出量の約4分の1は農林業由来とされています。
わが国でも、2021年に農林水産省が「みどりの食料システム戦略」を策定し、政府のグリーントランスフォーメーション(GX)推進戦略は、農林漁業を脱炭素と経済成長の同時実現に資する分野として位置付けています。2024年に改正された食料・農業・農村基本法は「環境との調和」を新たな基本理念としており、農林水産省は2024年度から、環境負荷低減の取り組みを全ての補助金の要件とします。
しかしながら、こうした「持続可能な食と農」に対する生産現場の受け止めには温度差があります。その実現には、栽培方法の転換や販路の確保など、課題も多いためです。担い手の高齢化や人手不足、生産資材の高騰や農産物への価格転嫁が不十分といった他の課題も山積しており、新たな挑戦のハードルとなっています。
一方で、既に取り組む現場からは仲間づくりを求める声があり、課題解決につながる技術や製品、販路を持つ企業や研究機関も数多くあります。業種と関係なく生産現場を応援したい企業、独自の支援策を展開する自治体も少なくありません。環境に配慮して作られた農産物を食べたいという消費者、そうした農業に取り組みたいという新規就農者・教育現場の関心も高まってきています。
そこで、日本農業新聞は、「持続可能な食と農」の実現に向け、さまざまな関係者が集う場として「みどりGXラボ」を設立します。目指すのは、環境負荷の低減や脱炭素と農業経営・地域の持続可能性の両立です。先進事例や最新の動向を共有するとともに、会員同士の交流・連携を通じて課題解決の手法を探ります。これらの情報や活動内容を積極的に発信することで、国民各層の関心をさらに高め、地域や次世代にも広げていきます。
2024年5月
日本農業新聞