草むら潜む吸血鬼 マダニは湿った環境を好み、草むらややぶの中の地上から高さ1メートルほどの間に潜んでいる。鹿やイノシシなど野生動物に寄生し、十分に吸血すると地上へ落下する。草むらで産卵、脱皮を繰り返し、草刈りや狩猟、ハイキングで入ってきた人に取り付く。感染した人の半数が農作業中だという。
避けよう肌の露出 長袖・長ズボン、手袋、長靴、帽子など肌を露出しない服装が必要だ。蛍光色の服であれば、付着したマダニを見つけやすい。また、マダニや蚊が嫌う化学成分(ディートやイカリジン)が含まれた市販の虫よけ剤も効果的。同時に、小まめな水分補給やファン付き作業着の着用など熱中症対策も必須だ。
マダニは服の繊維に引っかかったり、足元から登ったりして取り付く。皮膚の露出を減らしても、衣服の隙間から侵入するケースも少なくない。
帰宅すぐ着衣確認 マダニは1分間に5~10センチ移動するという研究結果があり、作業が終わったらすぐに衣服や体を目視し、マダニがいたらはたき落とす。髪や見えない所に付着している可能性も考え、帰宅後はシャワーを浴びて吸血前に洗い流す。マダニの体長は3~10ミリ程度だ。
引き抜かず受診へ 「刺されない」が最優先だが、刺された後の対応次第で生死を分ける時がある。刺された後、いつの時点でウイルスが人へ感染するかは分かっていないため、皮膚に吸着したマダニは無理に引き抜かず、受診する。
刺されたことに気づかず、2週間以内に発熱した場合は医師に「マダニに刺された可能性」を伝えることが適切な診断と治療につながる。
鹿・イノシシ生息域と一致
マダニが媒介する感染症の患者数が多い地域は西日本を中心に分布しており、ニホンジカとイノシシの生息域ともおおむね一致する。40年にわたる環境省の調査によると、ニホンジカは北海道を中心に近畿以西に集中。イノシシは中部から九州のほぼ全域で確認され、この10年間で双方とも東北や北陸など北へ生息域を広げている。
森林総研の岡部氏は「生息域の広がりが感染者の増加につながっている」と指摘する一方、「感染症の知識が広がり、受診する人や検査する医師も増えている」点も挙げた。