地元農家が「サポートリーダー」 体験・研修受け入れ
1人で就農する場合、面積は1ヘクタール。温州ミカンの超極早生と早生を各30アール、極早生とマイヤーレモンを各20アール栽培すると、作期も異なり、労力や天候不順による減収リスクなどを分散できる――。
町が地域の魅力をPRするために設けた専用サイト「青を編む」で示す「みかん農家モデル」の一例だ。新規就農者が無理なく管理できる経営モデルを設定。ミカン農家の年間作業スケジュール、I・Uターン就農者の体験記なども掲載する。
「移住後のイメージが湧き、この町でミカン栽培がやりたいと決意できた」と話すのは、23年4月から町内のかんきつ農家の下で研修する西岡宏展さん(51)。「みかん農家モデル」を閲覧したのをきっかけに、妻の長閑(のどか)さん(47)と名古屋市から移住した。
町は、「みかん農家モデル」などを見た就農希望者に、1泊2日から1週間程度の農業体験を勧める。優れた栽培技術を持つとして県の認定を受けた地元農家が「サポートリーダー」として受け入れ、宿泊先は町が無償で用意する。就農の意向が固まればサポートリーダーの下で1、2年間研修を受ける。
西岡さん夫妻も22年、かんきつ農家の高岡洋さん(59)の元で2回の体験を受け、23年4月から1年間の研修に入った。町内では24年1月以降も、県外からを中心に計11人が研修に入る。
町は「数値も示した具体的な経営モデル像と熟練農家のサポートを組み合わせ、本気でかんきつ栽培を続ける担い手を確保したい」(農林水産課)と構想する。町独自の園地の仲介制度も設け、就農を後押しする。
Iターン 欲しかったのは「仕事、求職」情報 政府調査
移住時に不足していたのは仕事の情報――。東京圏から外部に移住した人を対象にした政府の調査で、不足していた情報を尋ねると「仕事、求職」がトップだった。交通網や住居なども一定数が挙げたが、都市から地方への移住に当たって、仕事の確保を重視する傾向が改めて浮かび上がった。
内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局が公表している2021年度の調査結果によると、東京圏から自らの意志で移住した1814人の回答で、移住時に不足していた情報として最も多く挙がったのは「仕事、求職」の34%。「交通網、交通手段」が21%、「住居」が19%と続いたが、「仕事、求職」だけが30%を超えていた。