4月下旬、三重県津市立西が丘小学校の2年4組。4時間目の授業を終えた男子児童が献立表を見て歓声を上げると、他の児童も集まってきて「やったー!」とお祭り騒ぎだ。
「津ぎょうざ」は1985年ごろに津市で開発された学校給食の人気メニュー。直径15センチの大きな皮で具材を包み、油で揚げるのが特徴。同校の栄養教諭、渡辺裕子さんも「ここまで大きいギョーザの給食は他で見たことがない」と言う。具材に決まりはないが、学校給食では豚ひき肉、ニラ、タマネギのみじん切りを使う。
市によると、「栄養が取れて子どもが喜ぶメニューを」と市の栄養士が考案したのが始まり。ギョーザを包む手間と時間を考え、1人1個でおなかいっぱいになる大きな揚げギョーザになった。
2008年の「津まつり」で初めて一般市民に振る舞われると、19年にはご当地グルメを競う「B-1グランプリ」でグランプリを獲得。今年4月、地域に根付く食文化を認定する文化庁の「100年フード」に選ばれた。かつては特注だったギョーザの皮も、今ではスーパーで手に入るようになった。
同校は、児童756人を抱える市内最大の小学校。一度に作るギョーザの数は教職員らの分を合わせて800個を超える。
給食からさかのぼること4時間。調理室に調理員7人が出勤すると、準備を開始。午前9時過ぎからギョーザの皮に具材をのせて包み始め、大きな釜で80個ずつ揚げていく。校舎内に香ばしい香りが広がり始めたのは午前11時半過ぎだった。
こんがりときつね色に揚がったギョーザは、食缶に詰めて各教室に運ばれた。口いっぱいに頬張った2年の藤原瑛人さん(7)は「皮の端っこがパリパリで肉が軟らかい。天国のようなおいしさ」。
「子どもたちのために」を原点に手作りを続けた“日本一大きなギョーザ給食”は、40年たった今も児童の心をつかんでいる。