同校が甲子園に出場するのは春夏通じて初。校内でセンバツ出場決定を知った野球部員らは26日、「酪農の町」の学校らしく牛乳で乾杯し、喜びを分かち合った。
野球部主将の2年生、中道航太郎さんは「皆さんの応援のおかげ」と感謝の言葉を述べ、「野球で恩返しがしたい」と全国の強豪校との対戦に改めて意欲を燃やした。監督の島影隆啓さん(41)は、地域の手厚い支援に感謝を述べ「近隣高校の思いも背負って戦いたい」と決意を述べた。
野球部員は16人と強豪校と比べて少数ながら、23年秋季北海道高等学校野球大会でベスト4に進出。道内の高校野球で存在感を示す精鋭がそろう。
今回のセンバツに出場するのは32校。21世紀枠は、別海と田辺(和歌山)の2校に決まった。
牛の世話しながら練習
2年生の千田涼太さん(16)、林伸悟さん(16)も実家は酪農家。冬休みなどは、野球部の練習に参加しながら、自宅にいる時は子牛の寝床掃除や牛舎の除ふんなども手伝う。「いつも応援してくださる地域の人に野球で恩返ししたい」「酪農の町を野球で盛り上げたい」と2人は決意する。
部員が練習に専念でき、保護者の負担を減らすため、町も協力した。朝の練習時は、よほど近くなければ保護者の送迎が必要。ただ、実家が酪農家だと搾乳時間と重なり難しいケースも多い。事情を考慮した町は、町内の旅館を寄宿舎に改修。そこから通う部員も多い。
室内練習場がない同校野球部は雪のシーズンに入ると、グラウンド隅の農業用ハウスで、ティーバッティングやウエイトトレーニングを重ねる。「野球部に入ってくれた生徒たちの気持ちに応えたい」という島影監督の熱意と保護者らの協力で、雑草だらけだったハウスを整備。練習に集中できる環境にした。
ランニングや守備練習は雪が積もっていてもグラウンドでこなす。島影監督は「雪の上を転がるボールはイレギュラーする打球に似てる。練習内容によっては雪を逆手に取り、たくましい選手を育てたい」と話す。
後輩の活躍支えたい 別海町の酪農家で同校野球部OBの羽石和憲さん(37)
スマートフォンで出場校発表の中継を聞きながら、牛の寝床を整える作業をしていた。母校が選ばれたと聞こえた瞬間には、「よしっ」と思わず声が出た。
自分も甲子園を目指していた。かなわなかった夢を後輩が実現してくれた。
当時も十分に恵まれた練習環境ではなかったが、その分、父母会や地元の支援が心強いのが、別海高校だ。酪農の仕事は忙しいが、できるなら応援に駆け付けたい。
明るい話題励まされ JA道東あさひ(北海道)の浦山宏一組合長
自分も1980年に卒業した別海高校OBで、軟式野球部の出身。これほどうれしいことはない。
組合員や組合員の子弟、JA職員にも同校の出身者は多く、みんな自分のことのように喜んでいることだろう。
JA管内の基幹産業の酪農は近年、厳しい情勢が続いている。その暗い雰囲気を吹き飛ばしても余りあるニュースだ。野球部に物心両面で支援ができるよう、同校と連携したい。