パビリオンの中で育てたレタスをおにぎりに--。大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンでは、施設内の壁面で育てたレタスを「ミライの食と文化」エリアで提供するおにぎりの具材に使っている。野菜が育つ生産現場と、食べられる消費現場が共存。パビリオンの空間内で地産地消を体現する。
レタスは同パビリオン内の「未来のデモキッチン」に設置した屋内農業装置で栽培する。装置を手がけるのは大阪市のメーカー・スパイスキューブ。クリスピーレタス、ケールなど6品種120株を育てる。
収穫と定植は3週間に1回ほどの頻度で行う。肥料を加えた養液が自動循環する仕組み。会場で育ったレタスをその場で無償提供する他、足りない分はスパイスキューブの自社工場で育てたものを週に平均80パック(40キロ)納品する。
おにぎりは、フードエリアの「PACKN-TO(パクント)」が提供する。運営はドコモショップや飲食店運営などを手がけるオオサカムセンデンキ(大阪市)。同店のおにぎり「海賊サンド」シリーズや弁当でレタスを活用する。4月13日の開幕から5月下旬までの約40日間で約6350個の海賊サンドと、約4500個の弁当を提供。レタスの消費量は60キロを超える。
パクントの弁当を手に取った東京都の高見幸子さん(47)は、会場内で育ったレタスが使われていると知って驚いたといい、壁面の装置に見入っていた。「世界各国が集まる万博なので日本の食には興味がなかったけど、来てみたら日本の食や技術でも知らないことが多くて、日本のすごさや価値を再確認した」と話す。
スパイスキューブの須貝翼代表は「室内農業と消費行動が同じ空間にあることで、農産物の新しい物流構造、超近距離物流が確立できる可能性を万博では示せる」と期待する。

(島津爽穂)