
しかし、その実現には、農法の転換や販路の確保など課題が山積し、生産現場だけでは対応しきれません。そこで日本農業新聞は、農家やJAだけでなく、企業、研究機関、学校、自治体、消費者など、さまざまな主体が集い、課題解決を試みるプラットフォームとして「みどりGXラボ」を設立します。
目指すのは、環境と農業経営、地域がいずれも持続可能となる「持続可能な食と農」です。毎月1回のセミナーで先進事例や最新の動向を学び、会員同士の交流会も開きます。課題を抱える生産現場と、解決に役立つ技術やサービス、販路などを持つ企業とのマッチングも行います。
これらの情報や活動は、本紙やLINEで届くデジタルメディア「みどりGX新聞」で発信し、地域や次世代にも理解を広げていきます。いわば、仲間づくりと学びを進め、実践につなげる場です。


ラボは、オンラインセミナーを毎月1回開催。農家やJA、自治体など現場の実践事例の報告と、有識者による最新の情勢の講演を行います。「みどりの食料システム戦略」や関連事業の情報も定期的にお伝えします。
仲間づくりや連携のきっかけとして、会員同士の交流会も設けます。1年間の活動の成果を発表する「みどりGXサミット」、先進地を視察する「みどりGXツアー」なども企画します。
ラボには四つの会員区分があり、個人・法人を問わず、誰でも入会を申し込めます。

農家やJAなどは「みどり会員」、自治体や研究機関、学校、これらの職員、学生、消費者らは「グリーン会員」です。どちらも年会費は無料です。
企業、生協、業界団体は「賛助会員」。会員に技術やサービス、販路などを紹介したい企業やJAグループ全国連は「パートナー会員」とし、生産現場を応援してもらいます。
運営委員が座談会

入江満美 氏
東京農業大学 准教授

生産現場では新しい農業技術の情報浸透に時間がかかり、支援体制がないと大きく踏み切れない。例えば土壌診断の結果、補正する必要があっても、具体的な技術が分からず、そのままになっている場合もある。補助金だけでなく、助言を含めたサポートが必要。消費者とのつながりも重要で、接点があるとプライドを持って生産できる。離れた生産者と消費者をつなぐ場を作ることが大事だ。
香坂玲 氏
東京大大学院 教授

農業生産と環境保全は、放っておいては両立しない。しかし環境に配慮した農業は、生産者側にきちんと買ってもらえる安心感がなくては広がらない。生産者が自前で全てやるのも、国だけでも推進は難しい。JAや産業界、研究者、スタートアップ企業など民間を幅広く巻き込んだプラットフォームとして、ラボは非常に重要な存在となり得る。それらと生産現場をつなげる役割を期待したい。
鈴木定幸 氏
茨城県常陸大宮市長

市内の学校給食の食材全てを有機農産物にすることを目標に取り組んでいる。生産者に有機で作ってもらうには販路が重要だが、学校給食などの公共調達は確実性が高い。多くの自治体で有機農産物を取り入れるような働きかけと、それを届けられる物流体制の構築が重要だ。ラボが活動として掲げる、先進事例や最新動向の情報共有、会員の連携、情報発信をずばり進めてもらいたい。
山下麻亜子 氏
ビビッドガーデン取締役執行役員COO

産直通販サイト「食べチョク」の運営を通じ、生産者にも消費者にも、情報をいかにかみくだいて伝えるかが課題だと感じている。例えば、持続可能な農業への消費者の関心は高まっているが、どう作られているか詳しくは知らない人が多い。ラボの実証で具体的な事例を生み出し、そこから学びを得られたら理想的。生産現場から企業、消費者まで、一気通貫の取り組みを実際に行ってほしい。
山下正明 氏
兵庫・JAたじま専務

コウノトリとの共生のシンボルである「コウノトリ育むお米」は認知が進んできたが、有機農業など環境に配慮した農産物に対する消費者の理解は十分ではない。価格だけを見て敬遠する人はまだ多い。JAや生産者だけで理解を深めるには限界があり、国の動きに期待したい。みどりGXラボでも、有機農業への理解や食育の重要性など、消費者に対する踏み込んだ情報発信の必要性を訴えたい。
鈴木市長はオンラインで出席。オブザーバーとして、農水省の秋葉一彦大臣官房審議官も参加しました。