
ぐるなびは、2023年のトレンド鍋に「とろみ鍋」を選定した。同社の調べでは、23年7月までの1年間でとろみメニューを扱う飲食店が1・5倍に増えたという。
猛暑による夏ばてや冷房疲れが心配され、気温が下がるとともに体を温める「温活」に注目が集まると予想。さらに、鍋に加えた時、「とろみ」をイメージする食材のアンケートでは、「とろろ芋」が1位になった。

定食レストランのやよい軒は20年、国産ナガイモを使った「とろろしょうが鍋定食」を発売した。初夏の食材としてとろろをメニューに採用していたが、「鍋のバリエーションを楽しんでいただきたい」として、冬の鍋メニューにも導入した。
マルコーフーズ(埼玉県深谷市)は、北海道、青森産のナガイモ、関東産のヤマトイモを原料に冷凍とろろを製造する。「皮むきやすりおろしの手間が省け、コンビニや居酒屋、牛丼屋を中心にこの10年で売り上げが大きく伸びた」という。
簡便性に加え、「芋に消化酵素が含まれ、胃腸が弱まった時にご飯の消化を助ける”腸活”食材として注目が高い」(同)と、健康ニーズにも期待。夏が一番の売れ時だが、冬の鍋など季節を問わず消費の幅が広がり、販売をけん引する。

農水省によると、23年のナガイモの作付面積は4780ヘクタールと10年で4%減る一方、出荷量は12万6200トンと10%増加。年によって作柄の変動はあるが、多収品種への転換が進み、出荷量を押し上げているとみられる。
「十勝川西長いも」のブランドで知られる北海道のJA帯広かわにしは、マルコーフーズが製造する冷凍とろろ用にナガイモを供給する。曲がりやこぶが発生した下位等級品などを皮むき加工し、同社へ出荷。需要の増加に伴って供給量は近年、前年比1割増のペースで推移する。
ここ数年、雪不足による芋の凍結、夏の大雨による土からの窒素流失、猛暑による芋の伸長など気象被害が増加。卸売市場で評価が下がる下位等級が増える傾向にある。同JAは「上位等級の比率を何とか高めたい」(青果部)とした上で、「需給を調整して販売を下支えし、生産者に所得還元するには、(冷凍とろろ用は)重要な販路の一つ」と位置付ける。
(橋本陽平)