農家の必需品ともいえる軽トラ。自らのアイデアで、活用の幅を広げている農家を紹介する。
もみ殻を楽に散布したい――。そんな思いで千葉県の農家が開発したのが、軽トラックの荷台に取り付ける、もみ殻コンテナだ。塩ビ管などで作った骨組みを荷台に乗せ、骨組みにはビニールシートをかぶせる。シートの上からもみ殻を流し込んで荷台の上にため、圃場(ほじょう)にまくときは、シートごと滑り落とす。材料費は2万円ほどだ。
開発したのは、千葉県匝瑳市の水稲農家・依知川泰昌さん(62)。もみ殻は毎年11月ごろにまく。以前はもみ殻はポリ袋に入れて保管し、それを軽トラに積み込み水田に運び、まいていた。袋の数は100以上。次の年も袋を使えるようテープで穴をふさぐのも手間だったという。
開発したもみ殻コンテナは、軽トラへのもみ殻の積み込みと散布作業にかかる時間は、それぞれ1回当たり10分ほど。依知川さんの水田面積1・3ヘクタールだと、軽トラ10回分に相当する。
軽トラの荷台の上に、塩ビ管で作った直方体の骨組みを載せ、その上にシートをかぶせる。シートは複数枚をつなぎ合わせて余裕を持たせる。シートの上からもみ殻をトラクターのローダーで投入して、ためていく。
散布する際は、軽トラの一側面のあおりを倒す。あおりと一緒に骨組みの塩ビ管も倒れるようになっている。塩ビ管は長さ1メートルだが、管の中の木の棒を引き出すと2メートルまで伸びる。その上をシートを滑らせるように引っ張り、もみ殻を圃場に引き落とす仕組みだ。
シートにはひもを付け、引っ張りやすくしている。2人だと作業は楽にできるが、1人でも可能。骨組みを2メートルまで伸びるようにしたことで、圃場脇に軽トラを止め、水路をまたいで散布することも可能という。
この装置を10年ほど使ってきた依知川さん。「コンテナの底に傾斜を付けてもみ殻を滑り落としやすくするなど、改良の余地はまだある」と話す。