三重県伊勢市にあるJA伊勢の子会社、(株)あぐりん伊勢では、農業振興と新規就農者の育成に取り組み、今年で13年目を迎える。2023年3月には、イチゴの新規就農者向けに研修用ビニールハウス2棟(2496平方メートル)を追加で建設。希望者にリースで貸し出し、新規就農者がより自主的・実践的に栽培技術を習得できるよう支援している。
JA管内は青ネギやイチゴなどの栽培が盛んで、JAが主体となり産地化を進めてきた。しかし、近年は担い手農家の高齢化などで後継者不足が著しく、産地の維持が喫緊の課題となっている。
そのような中、農業振興と新規独立就農者の育成を目的に、12年に同社を設立。JAから出向した職員が中心となり、青ネギやイチゴなどを栽培することで一定の収量を確保し、農業振興に取り組む。また、新規独立就農を希望する研修生を募集し、研修社員として雇用することで、未来を担う新たな担い手の育成にも力を入れる。

同社での研修期間は1、2年間で、農作業での職場内研修(OJT)を通して栽培管理や流通販売などを学ぶ。育苗から定植、収穫、出荷までの一連の作業を行うことで、就農後の経営イメージを持ってもらう。
同社は、これまでに17人の新規独立就農者を輩出しているが、初めに直面するのは経営面での課題だ。特にイチゴの場合は栽培を始めるに当たり、ハウスの建設費や高設栽培システム・環境設備の導入費など、高額な設備投資が必要となる。そこで同社では、新規独立就農希望者に中古ハウスや農地をあっせんする他、栽培のために同社のハウスをリースで貸し出す取り組みを始めた。現在は4人が利用している。
同社の研修を終了し、24年6月から同ハウスでイチゴを栽培する松村佳樹さん(34)は、大阪府出身。研修社員として約1年間、同社で栽培技術を学んだ後、独立就農した。松村さんは「知人が先に同社で研修社員としてイチゴ栽培に取り組んでいたこともあり、興味を持った。ゼロからのスタートではなく、同社のサポートを受けながら独立就農できたことは、経営面だけでなく精神面でもとても大きな助けとなった」と話す。
同社では引き続き、農業振興と新規独立就農者の育成支援などを通して、地域の未来を担う農業を創造していく。