富山県のJAなのはな女性部は、部が運用するキッチンカーで、JA管内の富山市にある子ども食堂に出向き、地元産食材を使った食事の提供と食農教育の推進を両立する。2024年の能登半島地震で、震度5強を観測した氷見市にキッチンカーを派遣して炊き出しを行うなど、地域貢献とJAの存在価値の発信に貢献している。
キッチンカーはJA女性部員の発案がきっかけだった。キッチンカーの導入にかかった約650万円はJAが負担。2トントラックの荷台にガスこんろや水回り設備などを整えたキッチンカーが完成した。「Kitchenなのはな」として、18年から地元のイベントなどに出向く。直売所から仕入れたり、部員が栽培したりした野菜を使った弁当などを年間約30回販売し、毎回好評を得ている。
地域の子どもたちにできることをしたいという部員らの思いから、24年12月にボランティアグループを結成。「ふじのきこども食堂」へキッチンカーを派遣し、地元の野菜や米で作ったカレーとフルーツゼリー150食を提供した他、米約60キロを寄付した。米は、JA女性部・青年部員が寄付する「愛の新米一握り運動」の米だ。子ども食堂では食農教育の一環で、女性部副部長の上滝澄子さん(76)が食べ物の大切さを伝える紙芝居を読み聞かせた。
災害時にもキッチンカーは活躍した。能登半島地震が発生して間もなく、調理場所を選ばないメリットを生かし、氷見市の避難所へ炊き出しを展開した。38棟が全半壊した市内全域の約1万4000世帯が一時断水する被害に見舞われた。温かい食事や十分な栄養を取れなくなった被災者の健康を考え、栄養豊かな焼き肉丼や豚汁、大学芋、ハクサイの漬物、煮豆のセット150食を調理し配った。
JA女性部は食品ロスも解消しようと加工品の開発にも力を入れる。管内で取れるタマネギは年間約85トンで、その8%ほどが規格外品となってしまう。無駄にせず、生産者に貢献しようと、マスイチ醸造(富山市)と協力し、規格外のタマネギを活用した「発酵玉ねぎ調味料」を22年に開発した。
JAなのはなの組合長で、女性部長でもある谷井悦子部長は「地域に愛される存在として、キッチンカーを通じ、幅広い世代に地元産野菜が安全・安心でおいしいことを知ってもらい、地元の伝承料理を次世代につなげたい」と力を込めた。