前回は協同組合の「協」の字について考えてみました。今回は、協同組合は「相互扶助の精神に基づいた組織」といわれますので、難しい言葉ですが「相互扶助の精神」とは何かを考えてみたいと思います。
「わたしたちとJA」(JA全中)によると、「相互扶助の精神」についてこう記されています。「扶は『助ける』の意味で、扶助は助け合うこと。相互扶助の精神とは、自立した個人が連帯し、助け合う精神のことである。相互扶助といっても他人に依存して助けてもらうだけでは相互扶助とはいえない。お互いの自主・自立が前提となる」
物事を行うときは、普通は自分でかかる時間や費用など段取りを考えて自らが実行に移します。まさしく「自助」で、他人に頼らずにできることそのものは「有能」と言えるかもしれません。
その一方で、他者に頼ってできることもあり、「他助」とも言います。例えば、政府や自治体から目的に応じた補助金やサービスの提供を受けることや、自分が行っていることに共感する人から寄付や援助を受けるということです。特に、近年の例を挙げると動画サイトの生配信に対して、サービスの対価を超えるような「投げ銭」を行うことも、一種の寄付ともいえるでしょう。
しかし、このような他助は限界があり、例えば災害からの復興や事業のスタートアップに関しての他者の支援は、復興の達成や事業が軌道に乗るまでの期間限定的なものです。
そこで共に助け合う「共助」、すなわち相互扶助の精神につながります。あくまでも助け合う仲間は自主・自立していなくてはならず、他者から恩恵を受け続けるだけのフリーライダーでは良くないのです。
そもそも、JAが農産物の出荷を行うのも、農家1戸だけでは農産物の品質と量がそろわなかったり、市場で買いたたかれる危険性もあったりするので、組合員相互の努力の下、質も量もそろえ、JAによる共同販売を行い、市場で価格交渉力を形成しています。
同様に、JAで信用事業(JAバンク)を行っている歴史をたどれば、農家1戸の資金だけでは規模拡大などの経営に限界があり、銀行から農家が融資を受けるのが難しかったため、JAの前身の組織である産業組合へ農家組合員たちが貯金をしたお金を原資として、他の組合員が融資を受けることから始まっています。
このような相互扶助の精神は「一人は万人のために、万人は一人のために」という欧州が起源の格言に象徴されます。一般的には「万人」を「みんな」に置き換えて、ラグビーの精神や「三銃士」の誓いの言葉などとして有名かもしれませんが、協同組合の根幹を表す言葉としても浸透しています。