最終回は「21世紀の協同組合原則に関するICA(国際協同組合同盟)の声明」(95年原則)の第6原則として明示されている「協同組合間の協同」について考えます。
この原則は、1966年に改正された原則にも明示されています。生協の源流である英国のロッチデール公正先駆者組合やドイツのシュルツェ=デーリチュ、ライファイゼンによる信用組合などの近代的協同組合が成立した19世紀半ばの時点でも、協同組合同士が協同し合うことが追求されてきました。
例えば、英国の生協同士が連携して大規模な卸売協同組合を設立したことや、ライファイゼン系信用組合に対する指導や監査を行う機関が設立されたことが挙げられます。
では、JAはどうでしょうか。JA綱領の前文にも「地域・全国・世界の協同組合の仲間と連携し、より民主的で公正な社会の実現に努めます」とあり、まずJAと都道府県段階・全国段階の連合会や中央会の関係が挙げられます。具体的には連合会では余裕金の運用、共済の責任保有、農産物の広域販売や生産資材の有利仕入れがあり、中央会による相談業務や教育研修の支援などでしょう。
JA同士で訪問し合い、事業や活動について意見交換をするなど研さんを積むことや、直売所で自JAの管内の農産物だけではなく、遠くのJAの加工品を連携して販売することも珍しくはありません。さらには、食べ物というつながりでは生協への農産物供給や、漁協との連携による地産地消の推進が挙げられます。
この他、農林水産業を支える水系を守るためのJA・森林組合・漁協と連携による県境保全の取り組み、ワーカーズコープ(労働者協同組合)とJAの連携による学童保育運営、医療生協とJA・生協などの連携による地域の困り事解決、各協同組合が連携した大学寄付講座での協同組合論の講義など、さまざまな取り組みが各地で行われています。
今年は2012年に続き、2回目の国際協同組合年(IYC2025)です。IYC2025のテーマは「協同組合はよりよい世界を築きます」となっています。協同組合が自らの事業や活動により社会貢献し、持続可能な開発目標(SDGs)の実現につなげることは、協同組合の良き伝統でもある協同組合間の協同が不可欠になります。
読者の皆さんがJAで働くことが、より良い世界を築くことになる素晴らしい取り組みなのです。皆さまの活躍を祈っております。
参考=日本協同組合連携機構(JCA)ホームページ
(第1部おわり)