歴史ある栗「銀寄」の産地を守ろうと、JA大阪北部は、地域住民を巻き込んだ援農プロジェクトを始動させた。取り組みの柱となるのが、農業ボランティアの育成。農業経験の有無を問わず募集した“助っ人候補”に、JAが企画した年6回の作業に参加してもらい、技術習得を促す。参加者に栗への理解を深めてもらいながら労働力支援につなげる狙い。
JAは大粒品種「銀寄」発祥の地とされる能勢町など、古くからの栗産地を管内に持つ。現在は能勢町倉垣地区を中心に130ヘクタールで栽培するが、高齢化や後継者不足に病虫害や台風などの被害も重なり、耕作面積が減少。出荷量も年々減り、生産基盤の維持が産地の課題となっている。
生産基盤の弱体化に歯止めをかけようと、JAが2024年度から始めたのが農作業を手伝う栗栽培ボランティアの育成だ。農業経験の有無は問わず、管内の住民を対象に募集をかけ、初年度は4人から応募があった。
作業への参加は無料で8月から翌3月までの全6回実施。参加者の中には農業経験がない人もいるため、刈り払い機の使い方など基本的な作業からJA担当者が一対一で指導する。その後は栗の生育に合わせ、収穫や剪定(せんてい)、施肥、苗木の植え付けなどの作業を経験してもらう。
豊能町に住む乾喜弘さん(67)も24年度の栗栽培のボランティアに参加した一人だ。以前勤めていた職場を退職後、自身の園地で本腰を入れて栗を栽培しようと決心したという。「一つでも知らないことが分かったら、自分の成長につながる」との思いで応募した。
作業を通じて「基本的な部分も振り返ることができた」と話す乾さんだが、特に学びになったのが剪定の作業。「銀寄らしい大きい実にするために剪定は欠かせない。実がもったいない、という考えは捨てて枝を切ることを学べた」と振り返る。技術習得だけでなく「一緒に参加した人と仲良くなれたのも良かった」と話す。
能勢町の栗農家・西田彦次さん(79)も取り組みを歓迎する。地域の栗農家の高齢化を実感する西田さんだが、「農家がいざという時に頼れる人がいると心強い」とボランティアの育成に期待する。
取り組みを企画したJAは「ボランティアで得た知識や経験が農業を始めるきっかけや、栗農家を手伝う第一歩になればうれしい」(営農課)と話す。本年度も7月31日までボランティアの応募を受け付け、栗産地維持に向け歩みを進める。