農水省は8月末、有効な防除策が確立されていない果樹の病気・火傷病が中国国内で発生したことを受け、同国からの花粉の輸入を停止した。同病が花粉を介して国内に侵入する懸念があるためだ。
苗木・急な増産困難
「毎日問い合わせが来るが、11月から出荷する今期の生産分はもう売り切れている」。授粉樹「長十郎」や「ヤーリー」などの苗木を生産する菊地園芸(山形県南陽市)の担当者は明かす。 例年、授粉樹の苗木は注文が少なく、同社の生産量も多くても各品種50本ほど。だが、同省が中国産花粉の輸入停止を発表して以降、農家から注文が相次ぐ。苗木は、授粉樹の枝(穂木)を2月ごろに冷蔵、4、5月に台木に接ぎ、11月以降に出荷する流れ。そのため、来年11月以降に出荷する分からの増産を検討する。長野県の業者も、苗木は売り切れだという。
機械・製造フル稼働
花粉採取には、摘んだ花から雄しべだけを取り出す選別機や、葯(やく)を加温して開かせる機械などが必要だ。それらの機械の国内シェアほぼ100%を握るミツワ(新潟県燕市)にも、問い合わせが殺到している。
来春の授粉に間に合うよう各機械の製造量を例年の2、3倍に増やす予定だが、注文量に間に合わない可能性がある。葯の加温機は、半導体の価格の高騰で製造コストが増す懸念もあるという。
地域で協力を
同省は「どんな資材がどのくらい足りないか、状況把握を急いでいる」(果樹・茶グループ)。一方、JAなどの単位で、地域の農家で花粉の融通、機械の共有をするなど、「産地単位での取り組みも検討してほしい」とする。