同省の推計では、中国産の花粉は日本では梨の3割、リンゴの3%で授粉作業に使われている。中国で火傷病(かしょうびょう)が確認されたことを受け同省は、中国産の花粉を介して国内に侵入する懸念があるため、8月30日に輸入を停止した。
リンゴは蜂などによる自然交配も多いが、梨は人工授粉が主体のため中国産花粉への依存度も高い。同省は今回の輸入停止の影響も「梨で大きい」とみる。
梨主産地の千葉県は「面積の3割ほどで中国産の花粉が使われているのではないか」と指摘。花粉を自給する農家もリスク分散で輸入花粉を購入している場合があるとし、「影響を受ける農家数は多い」とみる。
同省は9月上旬、県やJAなど関係者向けの会合を開催。輸入禁止が長期化する恐れもあることから、各産地で花粉採取を進めるよう呼びかけた。
具体的な方法として①花芽のついた剪定(せんてい)枝をハウスで加温し採取する②花粉生産用の木からの採取量を増やす③開花期の早い木から採取しておく──を提案した。
産地での中国産花粉の使用実態や在庫の状況は、全県が調査を進めており、同省は10月上旬に結果をまとめて公表する予定。産地では、個々の農家では花粉の確保に限界があるとみて、実態把握を基に、地域内で花粉を融通し合うなどの対応につなげたい考え。農家やJAなどに中国産花粉の在庫があった場合は、国が買い取り・廃棄する方針だ。
一方、農水省が呼びかける花粉の自給策について、国内の複数産地から、「人手の確保が課題になる」との声も上がっている。
火傷病
梨やリンゴ、ビワなどが感染し、枝や葉、花などが火にあぶられたように枯れ、木が枯死する場合もある。有効な防除方法は未確立で、感染した場合は伐採する。欧州地中海地域植物防疫機関(EPPO)によると、57カ国で発生。近隣国では韓国や中国などで発生している。