プラスチック被覆肥料は、表面をプラスチックでコーティングした粒状肥料で、中身の肥料が溶け出すタイミングを調節できるのが特徴。水稲では、追肥が必要ない元肥一発肥料が開発され、作業負担を大きく軽減している。ただ、肥料が溶け出した後に残るプラスチック殻が川や海に流出し、環境汚染につながるとの懸念がある。
これに代わる技術として注目されるのが2段施肥だ。今回の粒状肥料で取り組める施肥機は、JAグループのアグベンチャーラボがベンチャー企業を支援する事業「JAアクセラレーター」を利用して開発した。
施肥機は田植え機に取り付け、深さ3~5センチと12~15センチの2層に施肥できる。一時的に農地に切れ目を付け、肥料を投入する仕組み。層ごとに肥料の種類と量を変えられる。
24、25年産は実証試験を行う。今後、参加農家を募集する予定で、11月7日には実地とオンラインで説明会を開く。同社代表を務める農業法人ぶった農産(石川県野々市市)の佛田利弘社長は「専用のペースト肥料でなく、一般的な粒状肥料で取り組めるので、生産現場に導入しやすくなる。脱プラスチックで環境に配慮した農業への転換を後押ししたい」と力を入れる。
肥料の業界団体によると、全国の水田面積の約6割で被覆肥料が使われている。全農と肥料の業界団体は22年、「30年にはプラスチックを使用した被覆肥料に頼らない農業に」との目標を掲げた。
2段施肥
田植え機に専用の施肥機を取り付け、田植えをしながら土中の表層と深層に肥料を施用する技術。水稲は根が伸びるにつれ、生育初期は表層の肥料、生育後半は深層の肥料を吸収する。異なる深さに施肥することで、肥料効果を長続きさせ、追肥を不要にする。