「被害が大きすぎる。今年の作付けまでに復旧できないだろう」。金沢市近郊に広がる河北潟干拓地にある内灘町北部地区。米15ヘクタールを作る川辺俊一さん(80)は途方に暮れる。
同地区は地盤が隆起と沈下を繰り返し、ほぼ全域で水田が波打っている状態だ。農地が農道より高い位置にあり水をためられず、側溝も傾斜が通常と逆転して排水できない。液状化で至る所で地盤が緩み、農機は入れない。
JA石川かほくによると、農地に水を送るポンプや送水管も壊れている。液状化の被害で、水田約60ヘクタールで今年の米の作付けが絶望視されているという。JAの脇田琢也営農部長は「苗や肥料、農薬のキャンセルがある。離農も増えて担い手不足に拍車がかかれば地域農業は維持できなくなる」と頭を抱える。
河北潟干拓地は内灘町を含め4市町にまたがり約1000ヘクタールの農地がある。今回の地震で干拓地を囲む堤防が複数箇所で沈下した。堤防の高さが低くなれば、大雨時に水位が上がった周囲の湖から水が流入し、農地が水に漬かる恐れもある。
野菜で被害も
県内の他の干拓地では、液状化で水が噴き出し、野菜が水没する被害も出た。中島干拓地(七尾市)では、キャベツやダイコンの畑が水に漬かった。市によると、干拓地には13ヘクタールの農地がある。
同干拓地の農家、松田友也さん(39)は、キャベツ畑約1ヘクタールがプール状態だ。「春に出荷予定だったが、水が引かなければ育たず収穫できないかもしれない」と懸念する。