石破氏は12日の総裁選出陣式終了後、記者団に対し、こう訴えた。米を念頭に置いた発言だ。
石破氏は「日本だけが農地を減らし、農業生産を落としている」と問題提起。農相時代に唱えた米の生産調整見直しを再び検証する意向を示し、「直接所得補償という概念も念頭に置きながら、今の時代に適合する農業政策、抜本的な農政改革を断行する」と述べた。
ただ、政府は、需要に応じた生産を阻むといった理由で所得補償を否定してきた。食料・農業・農村基本法改正案の審議でも、生産費の価格転嫁を重視。野党が求めた所得補償に難色を示している。
一方、林芳正官房長官は、政府方針通り、価格転嫁で米生産者の所得を確保したい考えだ。10日の政策発表会見では、資材高騰で再生産が危ぶまれると指摘。消費者の理解を得ながら適正な価格形成を法制化するとした。
河野太郎デジタル相は「財政規律を取り戻す」との立場。8月下旬の会見では、農業予算を巡り「効果がないものに予算を付けても結果がついてこない」と指摘、費用対効果を考慮すべきだとした。12日の演説でも「政府が補助金を付けたら、その産業が発展するのか」と疑問を呈した。
これに対し小林鷹之前経済安保担当相は、「経済は財政に優先する」との姿勢。財務省出身ながら積極的な財政支出を示唆する。10日の会見では「農業予算は増やしていく必要がある」と明言した。
小泉進次郎元環境相は「農業の構造転換を図るための施策を集中的に実施する」と、政府方針通りの“模範解答”を示しており、現時点で農業改革に触れていない。ただ、父・純一郎元首相の「聖域なき構造改革」になぞらえた「聖域なき規制改革」が旗印。12日の出陣式では「迷ったらフルスイングで頑張りたい」と力を込めた。
他方、林氏は10日の会見で、改革は必要との認識を示しつつ「納得してもらいながら先に進んでいくプロセスは大事にしたい」と述べ、合意形成を重んじる姿勢を示している。
(松本大輔)
