報告によると、19年に8万2982人だった東京都の転入超過は、コロナ禍の20年に3万1125人、21年に5433人まで減少したが、移動規制などが緩和された22年には3万8023人に増加。24年の転入数(46万1454人)から転出数(38万2169人)を差し引いた転入超過は、23年(6万8285人)より16%増となり、3年連続で増えた。
転入超過の7都府県のうち23年より大きく増えたのは東京、千葉、大阪で、コロナ禍で止まっていた東京などへの進学や就職、赴任が本格的に再開したことが影響したとみられる。
大都市圏では東京圏(千葉、埼玉、神奈川、東京)と大阪圏(大阪、兵庫、京都、奈良)が転入超過となったが、地方は人口減が加速。45道府県で東京への転出者が東京からの転入者より多かった。
転出超過数が最も多かったのは広島県の1万711人で、愛知県7292人、兵庫県7287人、静岡県7271人などと人口の多い地方ほど転出超過数が多くなっていた。また、23年と比べて転出超過数が最も拡大したのは茨城県(4177人増)、転出超過数が最も縮小したのは福井県(1718人減)だった。
また総務省は今回国外との移動状況を初めて公表した。国外からの転入者は73万5883人で、国外への転出者は37万1615人。国内の移動者に国外との転出入を加えると茨城や愛知など20都道府県で転入者数が転出者数を上回った。

東京一極集中が再び強まる一方、40道府県は転出超過になるなど若い世代を中心に地方の人口減が止まらない。東京など三大都市圏が被災地となる南海トラフ巨大地震が予想される中、大都市圏への人口集中は食料の安定供給も損なうリスクになる。地方へ人の流れをつくるにはどうすべきか。大正大学地域構想研究所の中島ゆき主任研究員に聞いた。
地方で仕事創出を 農業もデジタル人材必要
転入超過の増減を巡る議論は、今後その重要性が下がるのではないか。むしろ地方でのさまざまな仕事創出にフォーカスし、その結果として地方へ人の流れをつくる政策強化の議論が望ましい。
民間調査では、今春卒の大学生の6割が地元就職を希望している。「地元以外の地方で就職したい」人も44%で、地方で就職したいという若者は少なくないのだ。地方の転出超過で常に議題となる若者だが、彼らが希望する職種には、ウェブ系エンジニアや動画の制作といったIT系のクリエーティブ職の人気が高いが、それらの仕事が東京に集中し過ぎている。
農業でもロボット技術やITを活用した「スマート農業」を実現する技術、地域資源を国内外に発信するなど、IT人材と農業などさまざまな産業を掛け合わせた仕事がたくさんできるはずだ。「デジタル技術を使った農業人材を募集している」と呼びかけた方が、都会で暮らす若者もイメージできる。
地方にいても仕事ができる業種は多く、自然豊かな地域での生活を望む若者も少なくない。そこに関係人口や副業・兼業人材といった地域外からの人材を活用し、人口移動数ではなく、活力増加を指標とする議論が望まれる。
(聞き手・糸井里未)