会計法では、備蓄米をはじめ国有財産を売り渡す際は原則、入札で行うよう定めている。取引に公平性や透明性を持たせるためだ。
そのため備蓄米は、国がJA全農など大手集荷業者に入札方式で販売した後、卸売業者を通じて、小売りや中・外食事業者に供給する形をとっていた。
ただ、集荷業者の落札価格は60キロ当たり2万円を超え、入札競争が備蓄米の価格をつり上げる一因になっているとの指摘があった。このため国が主体的に販売価格を決める随意契約にすることで、備蓄米の価格を引き下げる狙いだ。
だが、会計法では、随意契約の売り渡し価格は、「取引の実例価格」を考慮して設定するよう定める。3月以降の入札で備蓄米の相場はある程度示されており、売り渡し価格をどのくらい引き下げられるかは未知数だ。備蓄米の在庫も残り60万トンで、国内の年間需要量の1割にとどまる。
同法との整合性も課題だ。同法は(1)災害など緊急性のある場合(2)売り渡し先が限られる場合--などに限り、例外で随意契約での売り渡しを認める。同省は現在、備蓄米がどの要件を満たすか精査しているとみられる。小泉農相は現在の米価を「緊急事態に近いもの」と指摘している。
備蓄米の販売を巡っても、小売りや中・外食事業者などに直接売り渡す場合、相手をどう選ぶのか、備蓄倉庫から誰が運ぶのか、どこで精米するのかなど、課題は少なくない。
安く仕入れた備蓄米を卸売業者や小売りが高く販売したり、消費者が転売したりしてしまう懸念もあり、どう防ぐかが焦点となる。
(北坂公紀)
[ことば]随意契約 国有財産を売り渡す際、国が任意で売り渡し先を選べる仕組み。価格は売り渡し先と協議した上で、国が決める。会計法では、国有財産の売り渡しは入札が原則で、一定の条件下で例外的に随意契約が認められている。